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税制メールマガジン 第30号 財務省


税制メールマガジン 第30号                 2006/07/31 

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◆ 目次

1 巻頭言 
2 税制をめぐる最近の動き
3 〜ある将来世代との対話〜
4 諸外国における税制の動き 〜ピカソの相続税〜 
5 編集後記

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1 巻頭言 

  昨年夏から1年間、巻頭言を書き綴らせていただきました主税企画官の
 矢野と申します。7月28日付けで主計局調査課長に異動いたしました。
 昨年7月号で、「微温的な話題を提供するのではなく、日本が抱える避け
 て通れない財政健全化の問題について、真正面から有益な情報や論議の題
 材を提供・発信していく所存です」などと野心的に口火を切って以来1年
 間、毎月、歯に衣着せぬと申しますか、失礼を顧みずお耳障りな話を重ね
 させていただきました。
 
  私は、できる限り情緒的、抽象的な話題を避け、客観的、定量的なお話
 をさせていただくように努めましたが、時折り、ローマ帝国や中世封建主
 義国が周辺属領や被支配階層からの不当な搾取で滅んだ歴史に学ぶべきで
 はないでしょうかとか、竹島領有問題や北朝鮮問題と財政破綻問題はいず
 れも平和ボケ問題として似ていると感じます、などといった主観的な話も
 してしまいました。
 
  毎号たくさんのご意見を頂戴しました。涙をこらえ切れないもったいな
 い励ましのお言葉を頂戴し、この先もひるまずにやっていかねばと鼓舞さ
 れたこともありました。一方で、やっぱりお前は増税しか考えていないん
 だな、といった手厳しいご叱責をいただき、陰鬱な気持ちになってしまう
 こともありました。
 
  私は、昨年の7月号の出だしで、「税は『必要悪』です。『社会の会
 費』とも言われる所以です。少なければ少ないに越したことはないので
 すが、必要な歳出を賄うのに十分である必要があります」と書きました。
 以来、この国の財政がいかに惨憺たる状態にあるか、なぜそうなったのか
 、今後の本格的景気回復でも自然治癒しないのか、デフレ脱却による税収
 増で収支改善しないのか、資産売却による税外収入増で収支改善しないの
 か、無駄の多い“大きな政府”ではないのか、財政再建を先送りしたら一
 体どうなるのか、といった点について、私なりの拙いご説明を展開してき
 ました。
 
  財務省の役人がこんな説明を上手くしおおせたとしても、国庫に金塊が
 積み上がる訳でも、歩合給をいただける訳でもありません。「財政の論理
 」というシニカルな言葉があります。ケチ臭い財政当局を皮肉って使われ
 る言葉で、かつては「財政エゴ」などとも言われました。「財政の論理を
 ふりかざすな!」といったふうに使われます。しかし、その抽象的な言葉
 の意味をよく考えてみれば、「財政の論理」とは、破綻せずに済むのかと
 いう「持続可能性の論理」であり、それは更に、このまま負担増に耐えて
 いけるのかという「負担者の論理」であって、財務省のための論理でも、
 財務官僚のための論理でもありません。
 
  財政の問題は、将来世代を悲惨な目に合わせてよいのかという問題であ
 り、また、金利が上がって現世代の経済活動や国民生活がスパイラルに落
 ちてよいのかという問題ですから、私たち国民全員の問題であり、国民一
 人一人の問題です。今のままでは財政破綻は不可避ですが、仮に財政破綻
 (国債暴落=金利急騰)が起こった場合に、政権を交代させてみても、財
 務省を解体してみても、残った債務は消えません。是非、この先も、財政
 の問題について皆様に主体的、積極的に考えていただきたいと念じます。
 1年間、本当にありがとうございました。大変失礼いたしました。

                主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 税制をめぐる最近の動き
 (1)日本とフランス共和国との間の租税条約改正交渉が基本合意に達しま
  した。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
   
   https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy180718fra.htm

 (2)日本とフィリピン共和国との間の租税条約改正交渉が基本合意に達し
  ました。
  ・概要は、下記URLにてご覧いただけます。
  
   https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy180718phi.htm

 (3)下記のとおり、税制調査会が開催されました。

  【7月4日(火)】
   第49回総会・第58回基礎問題小委員会合同会議
   ・これまでの審議等を踏まえた主な論点
    (法人課税、国際課税、消費税、その他)

  【7月11日(火)】
   第50回総会・第59回基礎問題小委員会合同会議
   ・歳出・歳入一体改革について
   ・これまでの審議等を踏まえた主な論点(総論)

  【7月14日(金)】
   第51回総会・第60回基礎問題小委員会合同会議
   ・これまでの審議等を踏まえた主な論点

   ・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。
   (順次、掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がござ
    います。)

    https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

   ・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。

    https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

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3 〜ある将来世代との対話〜

 「お父さんって、どんな仕事をしているの?」

 「税金の制度を作ったり、それを世の中の人たちに説明したりする仕事
 さ。」

 「何のためにそういう仕事をしているの?」

 「お前たちが大人になったときに、日本の国が借金だらけでどうしようも
 ない状態にならないようにするためだよ。」

 「ふ〜ん、それで、日本の国の借金はどれくらいになっているの?」

 「国債という国の借金は、今年度末で542兆円くらいになる見込みなん
 だ。これは国民一人あたり約424万円にあたるんだよ。」

 「どうしてそんなにたくさんの借金がたまってしまったの?」

 「実は、お父さんが役所に入ってから15年くらいの間に、国の借金の残
 高は3倍くらいに増えてしまったんだ。」

 「え〜っ。じゃあ、お父さんのせいで借金が増えてしまったの?」

 「そんな言い方をしなくてもいいだろう。景気が悪かったので税金を下げ
 たり公共事業を増やしたりしたのと、お年寄りが増えて年金や医療のため
 に国が支払うお金が多くなったことが主な原因だよ。」

 「じゃあ、景気がよくなったら国の借金は減らせるの?」

 「借金の額を減らすのはなかなか難しいけれど、今から10年後くらいま
 でに、国の経済規模に対する借金の比率が増えないような状態にしようと
 いう目標を政府で決めたところなんだ。」

 「そんな悠長なことを言っていないで、早く国の借金をお父さんが役所に
 入ったころのレベルまで減らしておいてもらいたいな。僕らが大人になる
 頃には、人口もかなり減るみたいだし、少ない人数の働き手でお父さん達
 のような老人をたくさん支えなくちゃいけなくなるんでしょう?せめてお
 父さん達が作った国の借金は、お父さん達自身が税金を上げてでも負担し
 てくれなくちゃ。」

 「でも、税金を納めている人達の間では、予算の無駄を徹底的に見直して
 からでなければ増税には納得できない、という声も根強いんだ。」

 「だからといって、僕たちの世代にツケを回してよいということにはなら
 ないでしょう?お父さん、もっとしっかり仕事をしてよ。」

 「・・・・はい、頑張ります。」

  上の会話自体はフィクションですが、国の財政の深刻な状況は、残念な
 がら紛れもない事実です。「増税しか選択肢はない」などと申し上げるつ
 もりはありませんが、少なくとも、借金を急速に増やした責任を追及する
 子供の質問に胸を張って答えられるよう、私たち一人一人が将来の財政に
 ついて真剣に考える必要があるのではないでしょうか。もちろん、私もそ
 うした大人の一人として、自分なりの答を求め続けたいと思います。

 ・「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」
 https://www.keizai-shimon.go.jp/cabinet/2006/dicision060707.pdf

                                          主税局調査課 吉田 昭彦
                                         
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4 諸外国における税制の動き 〜ピカソの相続税〜

 今年はピカソの生誕125周年です。

 ピカソは、斬新な形式を開拓しつづけ、生涯で2万点もの作品を残した
20世紀を代表する芸術家ですが、ピカソの故郷スペインでは、彼の生誕125
周年を記念して、複数の美術館でピカソ作品の特別展示会が開かれていま
す。

 ピカソの作品を専門的に扱った美術館は、スペインだけでなくフランス
のパリにもあります。ルイ14世の時代の塩税徴収官の屋敷である「塩の館」
を改装したピカソ美術館には、ピカソの作品が多数収められています。そ
の数、絵画203点、彫刻158点、レリーフ29点、陶器88点、デッサン1500点
以上、版画1600点以上。実はこれ、ピカソが亡くなった際に遺族が支払っ
た相続税というから驚きです!

 ピカソが亡くなる5年前の1968年、フランスでは相続税の支払い方法と
して、例外的に美術品の「物納」が認められました。本来、税金は現金で
納めなければなりませんが、芸術的に価値ある作品については、文化財を
保護する観点から、現金の代わりに物品で相続税を納めることが認められ
るようになったのです。

 フランスで「物納」は例外的な納付方法であり、その件数は概ね200件
弱と日本と比べてもずっと少ないのですが、フランス文化省の資料によれ
ば、毎年平均すると20億円程度(相続税額の約0.2%)の美術品や文化財
がこの方法で納められているとのことです。今年5月に公開された映画
『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台として注目を集めたルーブル美術館にも、
物納された作品が収められており、その中にはフェルメールやフラゴナー
ルの代表作も含まれています。

 ただし、「物納」には運用上難しい点があります。物品の選択をどうす
るのか、物品の評価をどうするのか、といった問題です。財務省や文化省
などの代表者で構成される評定委員会において物納の対象となる美術品が
審査され、市場価格だけではなく、文化財としての価値なども考慮に入れ
て、物納の可否や評価額が決められます。こうして物納が認められた美術
品は、国の文化財として美術館や博物館で保存されることになりますが、
ピカソの相続の場合は、納められる作品の数が多かったこともあり、既存
の美術館ではなく、新たな美術館が作られました。

 夏休みにパリを訪れる方もいると思いますが、少し足を伸ばして「ピカ
ソの相続税」を鑑賞してきてはいかがでしょうか。

                     主税局調査課 杉浦 達也

(参考)
スペイン政府観光局
https://www.spaintour.com/

ピカソ美術館(フランス政府観光局)
https://jp.franceguide.com/magazine/article.asp?idc=23098&

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5 編集後記


 梅雨が長引き7月は記録的な日照不足となりましたが、8月からは例年通
り晴れて「夏らしい夏」になるようです。この度、人事異動により主税局
広報チームも新たな体制でスタートすることとなりました。引き続きよろ
しくお願い申し上げます。次回発行は8月下旬の予定です。(吉住)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

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