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税制メールマガジン 第19号


税制メールマガジン 第19号        財務省         2005/8/31 

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◆ 目次

1 巻頭言
2 ジゾクカノウな○○
3 若手はこう見る 〜非営利法人制度と新たな事業体の創設〜
4 諸外国における税制の動き
   〜1つの税制、1つの税率 − 東欧のシンプルな税制〜
5 編集後記

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1 巻頭言

 皆さん、“借金時計”ってご存知ですか。世の中、いろんな「借金時計」
があり得るのでしょうが、いわゆる元祖“借金時計”とは、国の債務が時
々刻々どれだけ膨らんでいるか、カウンター・メモリー表示で表したもの
で、アメリカではじめられました。そのすさまじいカウント・アップを見
るや、普通の感覚ですと「卒倒」しそうです。

 そもそも、よくある「○○オリンピックまであと○日」といった電光表
示がカウント・ダウンであるのと違って、数が増えていくというのもさる
ことながら、24時間毎に「1」日ずつメモリー表示が動くのとはまるで
異なり、日本の場合でも毎秒およそ100万円もメーターが上がっていく
のですから、円単位の表示であれ、千円単位の表示であれ、目にもとまら
ぬ速さでメーターが巻き上がっていくのです。これを見ると、「時は金な
り」という格言をひしと実感させられます。

 「時は金なり」と言えば、国の借金が積み上がるスピードもさることな
がら、その借金を返すための利払い費も、すさまじいものがあります。国
債の利払い費が毎時どのくらいの額か想像できるでしょうか。1時間でお
よそ10億円です。10億円と言えば、平均的な小学校を1校建てる建築
コストに相当します。そんな膨大な「借金コスト」がかかっているのです。

 別の言い方をしますと、私たちの納めた税金(国の一般会計分)44兆
円のうち、18兆円までもが、社会保障のためでもなく、教育のためでも
なく、国防のためでもなく、借金返済(国債費=国債の元利払い)のため
に費やされているのです。その比率たるや4割を超えています(41.9
%)。税金の半分近くが、借金返済のための経費に消えている格好です。
もし仮にこの比率が100%になったら、いわゆる自転車操業状態(収入
の全てを借金返済に充てている状態)です。さすがにそこまで陥ってはい
ませんが、約半分が借金返済に回っているとは驚くべき事実です。

 これこそが、いわゆる「財政の硬直化」です。今を生きる私たちは、知
らず知らずのうちに、過去に積み上げられた国債のツケをそれほどまでに
負わされているのです。同じようにして、私たちは、将来世代に対して、
さらにそのツケ回しを増幅させてしまっているのです。返済(国債費=1
8.4兆円)している以上に、借金(公債金収入=34.4兆円)をして
いるのですから。これが基礎的財政収支の赤字(18.4兆円−34.4
兆円=▲15.9兆円)が意味するところです。

 一方で、わが国の人口は、2006年を境に減りはじめます。したがっ
て、1人当たりの債務はどんどん膨らんでいきます。財政の健全化を先送
りすればするほど、債務の総額が雪だるま的に膨らんでいくとともに、人
口は減ってしまい、1人当たりの債務は債務総額の増加速度よりもっと速
いスピードで増幅してしまうのです。財政の健全化を先送りするのが如何
に罪つくりかということです。

 ですから、血まなこになって歳出削減にいそしまねばなりませんし、そ
れが無理なら、いやだけど社会の会費を増やすしかありません。先ずは、
“行政の無駄”をなくし“割愛”を重ねればなんとかなるのか、それとも
それだけではどうにもならないのか、真剣につき詰めていかねばなりませ
ん。

                               主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

 (ご参考)財務省がオフィシャルに作成した“借金時計”はありません
            が、たとえば財部誠一さんがつくっておられるのをご覧くだ
            さい。

       https://www.takarabe-hrj.co.jp  「借金時計」               
 
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2 ジゾクカノウな○○
 
 みなさんは、もう愛知万博に行かれましたか? 目標入場者数の150
0万人を早々とクリアするなど、人気上々のようですね。わが家でも、先
日、1泊2日で行ってきました。予想通りの混雑振りでしたが、比較的空
いている外国パビリオンを中心に、さまざまな国の郷土料理を食べ歩きし、
さながら世界旅行をしているような気分が味わえました。

 ところで、今回の愛知万博のテーマは、「自然の叡智」。自然との「持
続可能な共生」を目指そうというものです。「持続可能な」とは、英語の
sustainableの和訳で、ちょっと硬い語感に聞こえるかもしれませんが、愛
知万博では、この言葉がキーワードとしてあちこちで使われていました。

 例えば、日本国政府が出展している長久手日本館。ここでは、「じぞく
かのうな少年少女団」と銘打って、小中学生向けに、ゲームをしながら、
地球環境問題について勉強できるような仕掛けが施されていました。小4
のわが息子も入団しましたが、おかげで、「じぞくかのう」という言葉ま
で覚えてしまいました。

 愛知万博のせいか、最近、この「持続可能性」という言葉や考え方が徐
々に日本でも浸透しているような気がします(先日は、テレビCMで使わ
れているのを耳にしました!)。この言葉のよいところは、「今は偶々う
まくいっているように見えても、いつかは必ず行き詰ってしまうこと」
(=持続可能でないこと)への警鐘を鳴らしている点です。人間は、仮に、
現状に問題があると認識していても、とりあえず足もと、何とかやってい
ければ、まあいいやと、問題から目をそむけがちです。でも、行き詰って
から対策を考えるのでは遅すぎるわけで、今のうちから現状を変える努力
をしていこうということです。

 ご承知のとおり、わが国の財政も、「持続可能」ではありません。名目
GDPの伸び以上に、債務残高が伸びており、このまま放置すれば、いず
れは立ち行かなくなります。従って、わが国の財政を「持続可能な」もの
にするためには、歳出歳入両面から思い切った改革を行っていく必要があ
ります。これは、痛みの伴うものですが、決して避けて通ることのできな
い大きな課題です。

 地球環境も、わが国の財政も、私たちの子や孫の世代に「持続可能な」
ものとして引き継ぐためにどうしたらよいのか? いま、まさに、私たち
一人一人がこれらの課題を直視し、真剣に考えなくてはならないときが来
ているのだと思います。

              主税局税制第一課主税企画官 長谷川 靖

 ・じぞくかのうな少年少女団
 
   https://www.nippon-kan.jp/manage/login.php

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3 若手はこう見る 〜非営利法人制度と新たな事業体の創設〜

 読者の皆さんは、法人といえば、まず、利益を追求して株主に配当を行
う法人を想像されると思います。株主に対して利益の分配を予定するこう
した法人は営利法人と呼ばれますが、世の中には、同窓会のように、会員
に対する利益分配を予定しない非営利の団体も存在します。そして、こう
した非営利団体の中には、法人格を取得して法人となっているものもあり
ます。また、非営利法人の中には、公益的な事業活動を行う公益法人と呼
ばれる法人が数多く存在しますが、現在は、これらの公益法人は事業を所
管する各省庁の許可を受けて設立されることとされています。

 しかし、こうした各省庁の許可制の下では公益法人の設立が簡便でない
ことや、公益性の判断基準が不明確であることなどを踏まえ、現在、内閣
官房行政改革推進事務局において、非営利法人制度の見直しが検討されて
います。具体的には、民間非営利活動を促進する観点から、非営利法人の
設立自体は登記だけで可能とする一方で、民間有識者から構成される委員
会が中立的に公益性の判断を行う仕組みが検討されています。こうした仕
組みは、いわゆる「民」が「公共」の領域により主体的に深く関与するチ
ャネルを切りひらくものと期待されており、今後は、非営利法人が、皆さ
んにとってより身近な存在になるかも知れません。

 こうした法人の種類の多様化に加えて、法人以外の形態による事業活動
も盛んになりつつあります。これまでも、映画製作委員会や建設共同事業
体(ジョイント・ベンチャー)のように、組合という事業形態を用いる事
例は見られましたが、この8月1日には、新たな組合制度として、有限責
任事業組合制度(LLP制度)がスタートしました。さらに、現在、法務
省においては、信託というスキームを用いて現在営利法人が行っているの
と同様の事業活動を営めるようにする事業信託という仕組みの全面的な解
禁が検討されています。

 法人であるかどうかを問わず、このように多様な事業形態が生まれるこ
とは、ニーズに合わせた事業活動の担い手を増やすこととなり、歓迎され
ることです。特に、非営利法人制度の改革は、価値観の多様化や社会のニ
ーズの多元化が進む中で、意義深いことと考えられます。しかし、新たな
事業形態の創設の意義を本当の意味で生かすためには、使い勝手のよさが
制度の悪用につながらないことも大事です。税制で言えば、同じような仕
組みで同じような機能を果たすものであるにもかかわらず、特定の事業形
態だけが税金を免れるという不合理な仕組みが作られてしまうと、その事
業形態は実質的に税負担を回避する手段として用いられることとなってし
まいます。そのような不健全な事態は避けなければなりません。

 税制は、「公平・中立・簡素」が三原則などとよく言われますが、納税
者の視点に立って制度に対する信用を確保することが一番重要だと私は考
えています。事業形態に限らず、多様化・複雑化するばかりの世の中です
が、税制の担当者としては、信頼される税制の構築を目指して、法人を取
り巻く新たな動きに的確に対応していければと考えています。

                    主税局税制第三課 一松 旬

・政府税制調査会基礎問題小委員会・非営利法人課税WG報告
「新たな非営利法人に関する課税及び寄附金税制についての基本的考え方」

  https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/170617.pdf

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4 諸外国における税制の動き
   〜1つの税制、1つの税率 − 東欧のシンプルな税制〜

 「シンプルって、うつくしい。」――ある携帯電話会社のキャッチコピ
ーですが、簡素でわかりやすいことは税制にとっても大事な目標の1つで
す。前号のメルマガでは、チョコレートをめぐるフランスの複雑な税制を
紹介しましたので、今回は究極の「シンプル」な税制を採用している国を
ご紹介しましょう。

 旧共産圏のスロバキアは、1993年にチェコ・スロバキア連邦が分離
して誕生し、2000年にはOECD、今年5月にはEUへの加盟を実現
させるなど、市場経済移行国としての道を順調に歩んでいます。このスロ
バキアでは2004年に、所得税の10〜38%の累進税率を廃止し、税
率を19%の一本にしました。これだけでも驚かされますが、所得税のみ
ならず消費税も、食品などに対する軽減税率を廃止して税率を19%に統
一し、さらに、法人税の税率も25%から19%に引き下げました。所得
税、法人税、消費税の税率を全て19%に揃えたのです!

 この一律税率への税制改革。奇抜に見えますが、東欧では珍しいと言え
ないかもしれません。所得税の累進税率を廃止して税率を一本にした国は、
ロシアなど9ヶ国に上りますし、そのうちルーマニアとエストニアでは、
法人税の税率を所得税と同じにしました。9ヶ国以外でも、ポーランドと
スロベニアが、所得税・法人税・消費税の税率の一本化を検討しています。

 この大胆な改革のねらいについては、労働意欲の向上や直接投資の促進、
税務行政の効率化などだと言われています。改革と経済成長の関係は明確
ではないとの指摘もありますが、近年5%以上の経済成長を達成するなど
経済のパフォーマンスは好調ですし、税収もわずかながら増えています。
スロバキアの首相が今年5月に来日した際、小泉総理に対して、「導入の
過程で議論はあったが、最終的に国民が受け入れた。一律税制の導入は結
果的に非常によかった。」と述べるなど、スロバキア政府は改革の成果に
自信を持っているようです。

 ただ、問題点の指摘がないわけではありません。所得税の税率が1つし
かないということは、所得の多い人も少ない人も同じ割合で税を負担する
ことになるわけで、課税最低限(約27万円=平均年収の約半分)が設け
られているとはいえ、所得税の役割の1つである所得再配分の機能が十分
に果たされているのか気になるところです。また、法人税については、1
9%というEU加盟国のなかでも低い税率に対して、自国企業の流出を心
配するドイツ(法人税率25%)やフランス(同33.3%)などは、税
のダンピングであると反発の声を上げています。
 
 税制は、シンプル(簡素)なだけではなく、公平さなどへの配慮も求め
られます。「うつくしい」税制をめざすことは、なかなか難しい挑戦なの
です。

                      主税局調査課 川本 敦

 ・日本・スロバキア首脳会談(平成17年5月23日)

   https://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2005/05/23slovak.html                    

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5 編集後記

 小中学生向けに財政や税制を解説したホームページ「ゴー!ゴー!ふぁ
いなんす★タウン」を開設して半年が過ぎました。初めて迎えた夏休み期
間、幸いにも多くの皆様にご利用いただけたようです。「楽しく税の勉強
をすることができた」、「宿題の役に立った」など子どもたちから寄せら
れた感想を読むと、暑さや疲れを忘れ、ますます頑張ろうという気持ちが
わき上がります。次回発行は9月下旬の予定です。(角田)

 ・ゴー!ゴー!ふぁいなんす★タウン
 
   https://www.mof.go.jp/kids/top.html

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ご意見募集のコーナー

 税制調査会では、「少子・高齢社会における税制のあり方」につき、ご
意見募集中です。

https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

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