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税制メールマガジン 第18号


税制メールマガジン 第18号    財務省            2005/7/29 

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◆  目次
1.巻頭言
2.慣性の法則の「わな」
3.オーストラリアに対する贈賄審査
4.諸外国における税制の動き
 (1)ドイツ総選挙と税制
 (2)フランス - ショコラと消費税
5.編集後記

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1.巻頭言

 このたび主計局(厚生労働係)から広報担当主税企画官に異動して参り
ました矢野と申します。前任の渡部に引き続きまして、どうぞ宜しくお願
い申し上げます。私自身は、6年ぶりの主税局勤務となります。当時は、
橋本政権下における「財政構造改革」の一環として「たばこ特別税」の創
設に携わったかと思えば、翌年には小渕政権下における「恒久的減税」を
担当したりなどと、波乱に満ち満ちた4年間でした。

 税は「必要悪」です。「社会の会費」とも言われる所以です。少なけれ
ば少ないに越したことはないのですが、必要な歳出を賄うのに十分である
必要があります。また、必要な税財源を誰がどう分担するかを(苦渋のう
ちにも)決めねばなりません。こうした意味において、税の「量」と「質」
の的確性が常に問われます。

 「量」に関して少々敷衍しますと、わが国の財政赤字(GDP比)は、
先進国のみならず、OECD加盟30カ国中でみても最悪であり、現在の
ような財政状況(大幅な基礎的財政収支の赤字)を続けていけばいずれ破
綻します。財政学の教科書でいう「出ずるを量って入るを制す」というの
では、高齢化の進展等に伴って壮絶な負担増に直面することとなりかねま
せんから、歳出を「身の丈」に合ったかたちに削減していくことも必須で
すが、一方で、「歳出」と比べても、「過去」と比べても、「他国」と比
べても、いずれも極端に低くなっている現在の税負担水準のあり方につい
ても、検討していかざるを得ないでしょう。こうして今「歳出・歳入一体
改革」の必要性が唱えられています。

 かつては、「知らしむべからず、由らしむべし」などとも言われました。
これは論語にある言葉ですが、賢人政治にお任せあれという矜持の念が滲
んでいるとも言われます。しかし、今やこと日本の財政に関しては、歳出
削減にせよ、歳入増にせよ、痛みを伴う改革が避けられないとすれば、「知
らしむ」ことなくして改革は実現できません。すなわち、いわゆる政府の
「説明責任」の十分性が大いに問われていると思います。

 このメールマガジンも、そうした趣旨から開設されたものですし、私自
身、微温的な話題を提供するのではなく、日本が抱える避けて通れない財
政健全化の問題について、真正面から有益な情報や論議の題材を提供・発
信していく所存です。今後ともご愛読賜りますとともに、皆様からのご意
見を頂戴して参りたいと存じますので、なにとぞ宜しくお願い申し上げま
す。

                主税局広報担当主税企画官 矢野康治

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2.慣性の法則の「わな」

 世の中というのは、どっぷりと浸っていると、案外、足元で起こってい
ることに気づかない。「慣性」があるのは、物理学の世界だけではない。
物事の認識の世界にも、ある。

 最近、人口減少社会をめぐって、喧しい。再来年(2007年)から人
口が減り始める、これは大変だ、出生率を引き上げて何とか人口減少に歯
止めをかけねばならない。――こんな議論が飛び交っている。

 でも、待てよ。間もなく人口が減り始めるのは確かだが、そんなことは、
実は30年も前から予測されていたはず。1975年に出生率は2.0を
割り込み、それ以降、減少し続けてきたのだから。

 気づいたときには遅きに失する。社会の構造変化というのは、こんな風
に進行するものなのである。まさに、慣性の法則の「わな」。


 ところで、私たちの社会は「制度」に支えられている。この「制度」と
いうのは、ある特定の社会構造を前提として仕組まれるもの。その時代を
映す鏡でもある。それゆえ、その社会構造自体が、慣性の法則に身を委ね、
音無しのごとく変化してしまうと、「制度」の方が、いつの間にか大きく
ズレを来してしまう。身体つきが大きく変わってしまったのに、いつまで
も、同じ洋服を着ようとしているようなものである。いずれ、その努力は
水泡に帰す。

 このように、「制度」は、たえず陳腐化のリスクに晒されている。


 税制も、「制度」のひとつである。

 今日の税制は、これまで様々な手直しがなされてきたが、それが前提と
している社会構造は、高度経済成長期における「当たり前」の世界に由来
する。働き方しかり、生き方しかり。「明日は今日より必ずよくなる」と
いう価値観しかり。

 でも、今日、こうした「当たり前」が「当たり前」でなくなっていると
いう感覚を抱いている人も多かろう。とすれば、税制も、慣性の法則の
「わな」に陥る危機に直面しているのかもしれない。ゆめゆめ、手遅れに
ならないよう、虚心坦懐に、心してかからなければならない。

         ★     ★     ★

 読者の皆様、こんな駄文の後、誠に恐縮ですが、昨年、政府税調がとり
まとめた「わが国経済社会の構造変化の『実像』について」に目を通して
みてはいかがでしょうか。私たちの税制について、何を今問わなければな
らないかが、そこはかとなく見えてくるのではないかと期待しています。                          

                  主税局税制第一課長 佐藤 慎一

 ・政府税制調査会基礎問題小委員会
   わが国経済社会の構造変化の「実像」について
    〜「量」から「質」へ、そして「標準」から「多様」へ〜

   https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/160622.pdf

 ・参考資料

   https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/tosin/160622sankou.pdf

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3.オーストラリアに対する贈賄審査

 題名から一体何のことかとお思いになる方がいらっしゃるかと思います
が、このような仕事もあるということで、OECD贈賄ワーキンググループに
よるオーストラリアに対する贈賄審査についてご紹介させていただきます。

 OECD贈賄ワーキンググループでは、外国公務員への贈賄を犯罪とするこ
と等を加盟国に義務付ける「OECD贈賄防止条約」(1999年発効)と贈賄の
税控除を否認すること等を加盟国に求める「理事会勧告」(1996、97年)
の履行状況について加盟国同士が相互に審査を実施しております。

 この審査は、「フェーズ1」と「フェーズ2」という2つの段階で構成
されています。「フェーズ1」は、前述の条約及び勧告で求められている
ことが法律できちんと定められているか等についての審査を実施します。
既に加盟国の全てがこの審査を終えています。

 次の「フェーズ2」は、捜査や訴追を含めて、法律で定めたことがきちん
と執行されているか等についての審査を実施します。加盟国の約半数がこ
の審査を終えています。

 本年は、オーストラリアに対する「フェーズ2」審査が実施されること
になっており、日本とニュージーランドが「主要審査国」になっています。

 この「フェーズ2」審査の一環として、本年6月に現地訪問審査が実施さ
れました。日本からは刑法学者、法務省(検察官)、外務省及び財務省の
計4名、ニュージーランドからは国際法学者、国税庁及び法務省(検察官)
の計3名、そして、OECD贈賄ワーキンググループの事務局からはオースト
ラリア審査担当者の計2名の合計9名が参加しました。

 この現地訪問審査にあたっては、オーストラリア法務省
(Attorney-General's Department)がその受入れの準備を行い、オース
トラリア連邦政府及びニュー・サウス・ウェールズ州政府(州都シドニー)
の関係省庁、輸出信用・開発援助機関、民間企業、学識経験者、NGO等
から参加者を得て、5日間で20回に及ぶ会合(Panel)を開催しました。

 会合では、「主要審査国」の参加者が、それぞれの議題に応じて、交代
で議長を務め、参加者に対し、質疑応答の形式で、審査を実施しました。
 
 OECD加盟国は、今回の贈賄審査のように、加盟国同士が相互に審査を実
施することで、他の加盟国の制度やその実情を把握し、その利点や欠点を
具体的に認識・検証することで、自国の実情に適った制度の構築や運用の
見直しに役立てながら、切磋琢磨しております。

                      主税局総務課 西野 健

(参考1)「OECD外国公務員贈賄防止条約の概要について(外務省)
    
  https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oecd/komuin.html

(参考2)外国公務員贈賄罪に対する国民の国外犯処罰の導入について
                          (経済産業省)
  https://www.meti.go.jp/policy/competition/anti-corruption.htm

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4.諸外国における税制の動き

(1)ドイツ総選挙と税制

 ドイツでは今年9月に総選挙が予定されていますが、税制もこの選挙に
おける争点の一つになっています。日本でもおなじみのシュレーダー首相
が率いる与党・SPD(社会民主党)と政権を争う野党第一党のCDU(キリス
ト教民主同盟)は先日マニフェストを公表しましたが、そこには付加価値
税、日本で言う消費税の、16%から18%への税率引上げが含まれています。

 政権を狙う政党があえて増税を掲げて選挙戦に臨むのはドイツでも異例
ですが、この背景には、EUの財政規律の基準に3年連続で違反を続けている
というドイツの深刻な財政赤字があります。ドイツでは、経済の低迷や失
業問題を背景として企業や家計の税負担を軽減してほしいとの要請がある
一方で、このような苦しい財政事情の下で歳入を確保することも求められ
ており、与党・野党ともに、選挙戦でどのような税制・財政政策を打ち出
すかに頭を悩ませているようです。

 少子高齢化に伴う社会保障費用の増大など、ドイツの今日の財政赤字を
生み出した事情には日本と似通ったものもあります。「日本におけるドイ
ツ年」の今年、ドイツの選挙戦と税制の行方にも注目してみてはいかがで
しょう。

                    主税局参事官室 小川 洋平

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(2)フランス - ショコラと消費税

 2000年公開の映画『ショコラ』は、フランスのある小さな村を舞台とし
ています。カトリックの戒律の厳しいこの村に、ジュリエット・ビノシュ
演じる訪問者がチョコレート店を開き、村人の悩みに応じて、チリ・ペッ
パー、ホイップクリーム、アーモンドなど様々なトッピングを加えたチョ
コレートを売ることで盛況を得ます。戒律に反したちょっとした「悪徳」
が村人を幸せにする、そんなエスプリの効いた小気味いい作品になってい
ます。

 さて、映画の筋とは関係ないのですが、税制当局の人間としてこの映画
を見て気になるのは、ジュリエットが作るそれぞれのチョコレートの消費
税の税率がいくらになるのだろう?という点です。と言うのも、フランス
では日本と異なり消費税の税率が複数あり(標準税率は19.6%、軽減税率
は5.5%)、チョコレート1つとっても税率が異なるのです。

 一般に食料品の税率は5.5%なのですが、チョコレートについては原則と
して19.6%が適用されます。ただ、この原則にも例外があって、板チョコ
やカカオ・ペーストなどには5.5%が適用されます。さらに、チョコレート
製品(チョコレート入りのビスケットやウェハースなど)の場合は、カカ
オの含有量が多い(重量が50%以上)と19.6%、含有量が少ないと5.5%が
適用される――等々の細かいルールがあって、なかなか複雑です。

 筆者も「ショコラ」が大好きですが、分かりやすい税制のもとで甘くお
いしくいただきたいものです。

                      主税局調査課 川本 敦

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5.編集後記

 始めまして。今月より、あられさんの後任として税制メルマガの編集を
担当することになりました角田と申します。読者の皆様に、楽しくわかり
やすい内容のメルマガを配信できるように頑張りますので、よろしくお願
い申し上げます。次回発行は8月下旬の予定です。(角田)

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ご意見募集のコーナー
 
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