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税制メールマガジン 第15号


税制メールマガジン 第15号  財務省         2005/4/28
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◆ 目次
1 巻頭言 〜サイエンス・フィクション(SF)の世界から〜
2 税制をめぐる最近の動き
3 若手はこう見る 〜租税条約とは?〜
4 諸外国における税制の動き
 (1) イギリスの2005年度税制改正について
 (2) スウェーデンにおける給付と負担
5 コラム 〜社会保障と税制(税制調査会の議論から)〜
6 編集後記
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〜お知らせ〜

 4月から、財務省ホームページ上に、「財政問題に関する特集ページ」
を開設するとともに、財政についての国民のみなさまの問題意識や不安等
を幅広くお聞かせいただく「ご意見募集コーナー」を設置しています。みなさ
まが日頃お考えのことなどについて、積極的にご意見をいただきますようお
願いいたします。

 ご意見募集コーナーはこちら。
https://www.mof.go.jp/tokusyu/index.htm

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1 巻頭言 〜サイエンス・フィクション(SF)の世界から〜

 最初の作品が1977年(昭和52年)に全米で公開されて以来、そのストー
リー、登場人物(ロボット)、特撮技術やデザイン、ひいては、映画ビジ
ネスの展開で、映画界に大きな影響を与えてきた、ジョージ・ルーカス監
督のSF映画「スター・ウォーズ」。この最新作「エピソード3/シスの復讐」
が全米で5月に、日本では7月に公開されます。昨年は、国立科学博物
館などでの展示会が話題を集めましたね。このシリーズもいよいよ完結か
と思うと感慨深いです。

 今年は、国連が決議した世界物理年(国際物理年)でもあります。アル
バート・アインシュタインが、1905年(明治38年)にそれまでの物理学を変
えたといわれる3つの独立した論文を立て続けに発表してから今年がちょ
うど100年目にあたることを記念したものです。アインシュタインの理論から
いくと、光の速さを超えるような宇宙船を建造することは非常に困難だと思
いますが、「スター・ウォーズ」などでは簡単にクリアされています。恒星間
旅行を手軽にできる宇宙船はとても魅力的ですが、残念ながら、21世紀
中の建造は現実には難しいことでしょう。ただ、科学のこれからにとって、
人間の好奇心や想像力を自由に拡げていくことはとても大切なことではない
かと考えます。映画も含めSF(science fiction)は、科学のことを楽しくわ
かりやすく伝える面も持ち、とても貴重なメディアのように思います。

 さて、「スター・ウォーズ」もそのコンセプトを借りている、広大な銀河にそ
の勢力を広げる「銀河帝国」を確固たるものにしたのは、アイザック・アシモ
フの功績とされています(「SFを科学する」)。<銀河帝国興亡史>(初出
は1942年(昭和17年))シリーズがそれです。アシモフは、「ロボットもの」
でも非常に有名なSF作家です。ロボットのことになると必ず言及される「ロ
ボット工学の3原則」も彼の考案になります(「新・SFハンドブック」)。アシ
モフ原作の映画「アイ・ロボット」も最近公開されていましたね。

 いま、日本では、ローマ帝国や英国近代史などの、いわゆる「帝国」の盛
衰ものが、現実の歴史書として非常に人気を博していると思います。アシ
モフのこのシリーズは、銀河帝国の没落から新しい銀河帝国の勃興まで
の、空想上の長い歴史を活写したものです。遺稿ともなったシリーズ7作目
最後の作品「ファウンデーションの誕生」(原書1993年(平成5年))では、
1万2千年も続いてきた銀河帝国は、その政府サービスを維持するため
に、大変な財政難に陥っていて、いまやその改善が急務とされています。
主人公のハリ・セルダン博士は、人間集団を統計的に扱う心理歴史学者
で、集団が十分な大きさを備えていれば、その社会的、経済的な動向が予
測できる(同訳書解説)という、まさに「夢の学問」の完成者ですが、作
中以下のようなせりふがあります。

 「・・庶民が安定した効率的な政府を維持する代償として税金を払いなが
らより良い暮らしを営むことができるとしても、かれらはそれにもかかわらず
税金を払うのをいやがるでしょう。この嫌悪感に打ち勝つためには、政府は
それほど多額のクレジット(銀河帝国の通貨名)を徴収しているわけではな
いことを明らかにしなければならないし、また、市民ひとりひとりの権利と便
宜を考えていることを明らかにしなければならないでしょう。つまり、低所得
者から取るパーセンテージを低くしなければならないとか、税金を取り立て
る前に、さまざまな控除を認めなければならないとか、しなければならない
のです。・・」(同訳書p234〜235)

 「・・実は、税制は両極端において、有効性を失う。複雑になれば、人民
はそれを理解することができないまま、肥大した費用のかかる税務組織に
金を払うことになる。そうかといって、簡素化をしすぎると、人民はそれを不
公平だと感じ、ひどく恨むようになる。最も簡単な税は、人頭税だ。この場
合はあらゆる個人が同額の税を払う。しかし、この方法で金持ちと貧乏人を
同列に扱うという不公平は、あまりにも明らかで、見逃すことはできな
い。・・」(同訳書p244〜245)

 現代の税制の役割として、財源調達機能、所得再分配機能などがいわ
れ、また、租税のめざすべき原則として、「公平・中立・簡素」ということがい
われますが、アシモフが描く遠い未来の銀河帝国でも、どうも同じようです
ね。

 なお、21世紀をむかえ、2001年(平成13年)12月に「SF入門」に掲載さ
れた、日本SF作家クラブの「オールタイム・オールジャンル・ベスト・海外
編」は1位から順に、「夏への扉」、「地球の長い午後」、「ソラリスの陽のも
とに」、「火星年代記」、「幼年期の終り」、「2001年宇宙の旅」、「虎よ、虎
よ!」、「スター・ウォーズ」、「宇宙船ビーグル号」、「アンドロイドは電気羊
の夢を見るか?」です。これを参考にして、連休の間に、映画「スター・ウォ
ーズ」の過去のシリーズをみてみたり、この選にもれましたが、<銀河帝国
興亡史>のほか、ベストの1冊ぐらい試しに読んでみたりするのも、イメー
ジを豊かに膨らませる、なかなか楽しいことではないでしょうか。

 それでは、皆様、楽しいゴールデン・ウィークとなりますように!

                        主税局広報担当企画官 渡部 晶

・国立科学博物館 特別展 「スター・ウォーズ サイエンス アンドアート」
https://www.kahaku.go.jp/special/past/starwars/index.html

・国際物理年のサイト
https://www.wyp2005.org/(英文)
https://www.wyp2005.jp/(日本委員会)

・「SFを科学する」(石原藤夫・福江純著 講談社ブルーバックス1987年)

・「ファウンデーションの誕生 銀河帝国興亡史」(アイザック・アシモフ著岡
 部宏之訳 牧眞司解説 早川書房 1995年(文庫化され、ハヤカワ文
 庫))

・「新・SFハンドブック」(早川書房編集部編 ハヤカワ文庫 2001年)

・「SF入門」(日本SF作家クラブ編 早川書房 2001年)

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2 税制をめぐる最近の動き

 4月の税制調査会では、下記のとおり、基礎問題小委員会において、個
人所得課税について検討が行われたほか、非営利法人への課税について
検討するため、基礎問題小委員会と合同で非営利法人課税ワーキング・
グループが開催されました。

 今後も、5、6月にかけて、個人所得課税及び非営利法人課税について
議論が行われていく予定です。

【4月12日(火)】
 個人所得課税について

【4月15日(金)】
 非営利法人に係る税制等について

【4月22日(金)】
 寄附金税制について

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。
https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。(順次、掲
載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がございます。)
https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

・内閣官房行政改革推進事務局(公益法人改革について)ホームページ
https://www.gyoukaku.go.jp/about/index_koueki.html

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3 若手はこう見る 〜租税条約とは?〜

 租税条約をご存知でしょうか。正式には、「所得に対する租税に関する二
重課税の回避及び脱税防止のための二国間条約」のことを言います。所
得税、法人税といった所得に対する租税を対象とした二国間条約です。先
進主要国やアジア諸国を始めとして、これまで45の租税条約を締結し、現
在55カ国との間で適用されています。これは、我が国の対外直接投資の
80%以上(金額ベース、累計額)をカバーしていることになります。

 租税条約には様々な目的があります。締約国の間の課税権を配分して、
国際的な二重課税あるいは二重非課税を排除することや、租税回避行
為を防止することは、重要な目的のひとつです。また、両締約国の税務当
局間の国際協力(相互協議や情報交換等)を促進することも大切な目的と
なっています。最近では、国際的な投資交流の促進という観点からも、租
税条約が重要と認識されてきています。

 例を挙げて考えてみましょう。日本のある自動車会社(親会社)が、アメリ
カに子会社を設立したとします。アメリカ子会社はアメリカで自動車を生産・
販売し、その利益を日本親会社に対して配当という形で支払います。この
配当に対して、所得源泉地国(この例ではアメリカ)と受益者(日本親会
社)の居住地国(この例では日本)の双方が課税権を持っています。ほって
おけば配当に対する二重課税となり、このままでは誰もわざわざ海外進出
しようとは思わなくなることでしょう。このような国際的な二重課税を排除す
るために、国内法では外国税額控除制度が設けられていますが、租税条
約においても、所得源泉地国における税率に限度を設けることにより(限度
税率)、二重課税に対処することとしています。上記の例で言えば、新日米
租税条約では、日本親会社がアメリカ子会社株の50%超の株式を保有し
ている場合には、アメリカでは配当課税が免除されることになります。

 昨年、約30年ぶりに改正した新日米租税条約については、ご存知の方
も多いのではないかと思います。日米に続いて、オランダ、イギリス、インド
といった国々と租税条約の改正交渉を進めています。人口の減少や家計
貯蓄率の低下等21世紀の我が国経済社会の構造変化が大きく進む中、
グローバル化の動きを生かし、投資交流の促進を通じた経済社会の活性
化は、我が国の大きな課題のひとつとなっています。投資所得(配当・利
子・使用料)等に対する源泉地国における課税の軽減等を通じて、租税条
約の改正がその一助となればと思っています。

                         主税局国際租税課 藤井 大輔

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4 諸外国における税制の動き

(1)イギリスの2005年度税制改正について

 イギリスでは、去る3月16日、ブラウン蔵相が下院で予算演説を行い、
2005年度以降の経済見通し及び財政・経済政策に関する政府の方針につ
いて公表しました。5月5日に行われる総選挙を控え、どのような減税措置
が行われるかが注目されていましたが、物価上昇率に合わせた諸控除の
引上げや、居住用資産の取引に係る土地印紙税のゼロ税率適用額の引
上げ、租税回避防止規定の強化等、小幅な改正にとどまっています。

 また、3月の予算発表に併せて、直接税を担当していた内国歳入庁
(Inland Revenue)と、関税や間接税(付加価値税等)を担当していた関税
消費税庁(HM Customs and Excise)が統合し、4月18日より新たに歳入関
税庁(HM Revenue and Customs)が発足しました。

 同日より、歳入関税庁のホームページが開設されています。ご興味のあ
る方は、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

                             主税局調査課 城戸 格

・歳入関税庁ホームページ https://www.hmrc.gov.uk/

(2) スウェーデンにおける給付と負担

 スウェーデンの税制や社会保障を調査する中で、スウェーデン国民の負
担と給付に対する感覚が特徴的であることに気付きました。

 スウェーデンでは1990年代前半に、当時の政権が負担水準と給付水準
を下げたことがありましたが、サービスの低下等によって国民の支持が得
られず、政権交代に追い込まれました。2005年予算においても就業支援
や保健・福祉分野など、政府が供給するサービスがいかに豊富であるかを
中心に挙げており、国民の興味はもっぱら給付の中身にあるようです。ま
た、2005年予算の編成過程においても、減税を公約に掲げていた野党第
一党は、支持率低下に対応するため、減税規模を当初の公約よりも縮小す
るという決定をしました。国民負担率が約71%と日本(約36%)のおよそ2
倍、日本の消費税にあたる付加価値税の税率が25%と高率であるスウェ
ーデンで、減税規模の縮小を決定することで支持率の回復を目指すという
のは一見不思議な感覚にも思われるかもしれませんが、これがスウェーデ
ンにおける負担と給付の関係なのかもしれません。

 このように、スウェーデン国民は、高負担を避けるというより、むしろどれ
だけ高水準の公的サービスを維持するかに着目し、それに応じた負担を選
択してきたのではないかと推察されます。

                            主税局調査課 小林 剛也

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5 コラム 〜社会保障と税制(税制調査会の議論から)〜

 税制調査会では、2月から3月にかけて3回にわたり、社会保障の勉強
会ということで、年金、介護、医療、少子化対策といった個別のテーマか
ら、社会保障全般に至るまで、さまざまな角度から議論が行われました。

 個々の施策についていろいろな意見が出ましたが、いずれも、少子・高齢
化の中で、社会保障制度を持続可能なものにし、時代にあった社会保障サ
ービスを提供するという観点に立ったご意見だったように思います。

 まず、「持続可能な社会保障制度」という点では、日本は、人口規模と高
齢化という点で、よく引き合いに出される欧州諸国とは全く違う状況である
というご指摘が印象に残りました。たしかに、日本の人口が1億2千万人を
超えているのに対し、イギリス、フランスはそれぞれ6千万人程度、ドイツも
8千万人を超える程度、スウェーデンに至っては900万人弱で神奈川県の
人口とほぼ同じです。65歳以上の人口割合を見ると、日本の19.9%に対
し、イギリス16.0%、ドイツ18.8%、フランス16.6%、スウェーデン17.2%
(2005年、いずれも推計値)となっており、日本が最も高齢化が進んでいま
す。

 また、日本では家族や企業が社会保障の代行機能を担ってきたため、高
齢化のわりに社会保障給付が抑制されてきたけれども、今後の一層の高
齢化や、家族や企業による社会保障の代行的役割の低下を考えると、高
齢者向けの医療、介護、年金といったものをどのように抑制するかが大き
な課題になるというご指摘もありました。少子・高齢化が進行する中で、社
会保障制度を持続可能なものにしていくためには、真に必要な方たちに効
率的に社会保障サービスを行うという視点が大変重要になってきていると
思います。

 二つ目の「時代にあった社会保障サービス」という点に関して、子どもを産
み、育てることを社会的に支援していくことが必要ではないか、という観点
からのご意見がありました。日本は、諸外国と比較すると、高齢者向けの
社会保障給付が手厚く、子ども向けの社会保障給付が少ない現状にあり
ますが、子育てをしている方に対するサービスをもっと手厚くする必要があ
るのではないかという問題意識です。その際、児童手当などの給付と所得
税の控除とを総合的に考える必要があるというご意見もありました。

 いずれにしましても、これからの税負担水準や所得税のあり方等につい
ては、社会保障制度の見直しについての議論を踏まえながら、検討を進め
ていく必要があります。
                                       (あられ)
・税制メールマガジン第10号
 5 若手はこう見る 〜社会保障制度を支える社会保険料と税〜
https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumaga161201.htm

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6 編集後記
 昨年3月に創刊した「税制メールマガジン」ですが、今月、登録者数が1
万人を突破しました。今後も、みなさまのご要望を踏まえながら、さまざま
な情報を発信していきたいと考えています。取り上げてほしい話題などござ
いましたら、積極的にお送りいただきますようお願い申し上げます。
次回発行は5月下旬の予定です。(あられ)

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ご意見募集のコーナー

 税制調査会では、「少子・高齢化社会における税制のあり方」につきご意
見募集中です。
https://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

 このメールマガジンについてのご意見ご感想はこちらへお願いします。
mailto:mg_tax@mof.go.jp

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