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貸倒損失の計上時期



 税務上、売掛金、立替金。貸付金などの不良債権が貸倒損失として認められるためには、その事実の発生や処理方法が決まっています。
 その貸倒損失の計上時期について、一般常識でいう貸倒れ時期と税法でいう損金算入時期において違っていますので、現在の税法においては要注意です。

基本通達にてこの貸倒損失が記載されています。

区分 発生した事実・内容 貸倒金額 損金算入時期
法律上の貸倒れ 会社更生法、民事再生法の再生計画の認可の決定による切捨てられることとなった場合 切り捨てられることとなった部分の金額 その事実の発生した日を含む事業年度
商法の規定による特別精算に係る協定の認可又は整理計画の決定又は破産法の規定による強制和議の認可の決定があった場合において切捨てられるこことなった場合
関係者の協議決定による切捨て
・債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めたもの
・行政機関、金融機関その他第三者の斡旋による当事者間の協議により締結された契約で合理的な基準によるもの
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けられないと認められない場合において、その債務者に対し書面によりあきらかにされた場合 債務免除の通知した金額
事実上の貸倒れ 法人が有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみて全額が回収できないことが明らかとなったこと。担保物があるときには、その担保物を処分した後でなければ貸し倒れとして損金経理することはできないものとする。
(注)
保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ、貸倒れの対象にすることはできない。

この規定は金銭債権について
金銭債権の金額 回収できないことが明らかとなった事業年度
金銭債権の一部について損金算入はできません。
形式上の貸倒れ 法人がその債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。下記も同じ)について、その債務者との継続的取引停止後1年以上経過した場合(担保物のある場合を除く)

この規定は売掛債権について(下記に同じ)
売掛債権の額から備忘価額を控除した金額 取引停止後1年以上経過した日以後の事業年度
同一地域の売掛債権の総額が取立て費用に満たない場合において督促しても弁済がないこと
弁済がないとき以後の事業年度
貸付金その他これに準ずる債権は、形式上の貸倒れの対象となりません。

 上記の規定から、代金回収に受け取った受取手形が不渡りになった場合、2回の不渡りで事実上倒産ですが、残りの売掛金などの未収入金について貸倒損失処理をただちにすることができません。
 法律上の貸倒れでないかぎり(こちらもかなりの期間かかりますが)いわゆる1年基準により1年たったあとでないと
貸倒損失として計上できません。

貸倒損失としてただちに計上するには、債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けられないと認められない場合において、債務免除する通知をだすしかないようです。


※参考※貸倒引当金の計上(50%の形式基準)


以前、法人税法上ありました債権償却特別勘定とほとんど似ています。
下記の事実にもとづいて、貸倒引当金の金額を繰入れることができます。

回収不能見込額=(対象となる個別評価金銭債権ー実質的に債権と認められない金額など)×50%
※この場合の個別評価金銭債権には、売掛金、貸付金その他これらに類する金銭債権、保証金、前渡金などもふくまれます。
@会社更生法又は金融機関等の更生手続きの特例等に関する法律に規定による更生手続の開始の申し立てがあった場合
A民事再生法の規定による再生手続開始の申し立て
B破産法の規定による破産の申立て
C商法の規定による整理開始又は特別精算開始の申立て
D手形交換所による取引停止処分の事実(確定申告書の提出期限までに生じた場合も適用対象となります)