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タックスニュース
2014.04.25


【時事解説】産地企業の経営革新



 同一の立地条件のもとで同一業種に属する製品の生産がなされている地域を産地といいます。

産地は中小企業を中心とした地域特有の多様な地場産業から構成されており、産地で製造される製品は日本全国や場合によっては海外に広く販売されることもあります。

 しかし、近年、産地内での企業数の減少がみられるなど多くの産地は厳しい状況におかれています。

そこで中小企業庁「産地概況調査(平成17年度)」に基づいて産地がどのような状況におかれているのかをみていきましょう。

 まず、産地の抱える問題としては、「内需の不振」と回答した産地の割合が69.0%と最も高く、以下、「構造的な競合輸入品の増加」(42.8%)、「受注単価の低下」(42.6%)、「原材料・部品価格の上昇」(28.1%)、「熟練技術・技能工の高齢化」(27.9%)、「後継者難」(26.8%)の順となっています。

 また、産地製品のブランド力についてみたところ、「海外でも知名度が高くブランド力がある」と回答した産地の割合は全体のわずか5.1%しかありません。

逆に「知名度がなくブランド力が低い」と回答した産地の割合は44.1%と産地全体の約半分を占めており、多くの産地がブランド力の低さという問題を抱えています。

 こうした産地の抱える問題は決して一過性のものではありません。
消費者の生活スタイルの変化が産地製品に対する需要の減少をもたらし、さらに低価格品の輸入急増が産地製品との競合激化を招くなど構造的なものとなっています。

 では、産地に立地する企業が経営革新を行うためにはどのような取組みが求められるのでしょうか。

 ここで島根県西部に立地する瓦製造業者A社の事例をみていきましょう。

 石州瓦は江戸時代初期に誕生し、良質の粘土と高い焼成温度によってもたらされる品質の良さを強みとしており、釉薬を高温にて焼成することによってもたらされる赤褐色の色合いでも知られています。

しかしながら人口減少やハウスメーカーの台頭などにより瓦産業を取り巻く環境は厳しい状況にあります。

 A社は、1806年創業の石州瓦製造業者で、創業以来超高温による瓦の焼成を長時間かけて行っていることから、極めて頑丈な瓦の製造が可能となっています。

 9代目にあたる現経営者は、創業200年を迎える2006年に製薬会社を退職し、妻の家業であるA社に専務として入社、2012年に社長に就任しました。

 現社長は伝統的な製法を継承し高品質なものづくりは追求しつつも、時代の変化に対応し顧客の細かな要望に応えるべく新製品開発による新市場の開拓に取り組んできました。

例えば、石州瓦の趣をタイルとして活用したり、瓦を器として生かすための直火に耐える瓦食器を開発したりしています。

こういった高付加価値製品の売上は、A社の売上全体の4分の1程度を占めるに至っています。

 このように産地企業が経営革新を遂行するには、既存事業がもつ伝統的な強みをしっかりと継承しつつも、伝統に安住することなく時代の変化に対応した新たな発想を製品開発に取り入れることが求められるのです。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)



記事提供 ゆりかご倶楽部





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