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タックスニュース
2013.05.27


大学秋入学、企業に及ぼす影響とは



 日本では入学式といえば4月、春入学が一般的です。

ところが、近年、入学時期を秋にしようという動きが強まっています。

昨年、東京大学は秋入学へ、5年後をめどに全面移行を目指すことを公表しました。

制度の詳細は検討中ですが、こうした東大の動きは他大学にも影響を及ぼしています。

現在、慶應義塾大学は秋入学への対応ができるよう学期スケジュールの見直しを検討中であり、ほかにも千葉大学、法政大学など、秋入学の移行に関して積極的な大学もあります。

 なぜ、秋入学の必要性が言われるようになったのでしょうか。

その背景には、急速に進むグローバル化への対応があります。

国際社会では、日本のような春入学は少数派で、米国、欧州、中国など、全体の7割近くの国が秋入学を取り入れています。

この時期のずれは海外留学の障壁となり、日本の大学がグローバル化で後れをとった要因にもなっています。

実際に、世界大学ランキングにおける日本の順位は年々低下しており、秋入学により国際社会における日本の大学の地位を上げたいという狙いがあります。

 とはいえ、入学時期の変更は就職活動や国家資格試験の日程をはじめ社会の各所に影響を及ぼします。

そこで、各大学はスムーズな移行を目指し、さまざまな角度から検討しているところです。

東大は、当面、入学は従来のままの春を維持しつつ、秋に始業(授業の開始)する案を提示し、また千葉大では3年半で卒業できる早期卒業制度を設けました。

各大学とも試行錯誤の中にあり、最終的にどのような制度に落ち着くのか、今後に目が離せない状況になっています。

 企業にとって、秋入学は好機にもなります。

秋入学で留学の壁が低くなると、大学では、世界各国の人材が従来よりも頻繁に行き来することが予想されます。

これにより、企業はグローバルな視点を持った学生との接点が増え、より採用しやすくなるでしょう。

 人材の多様化にはさまざまなメリットがあります。

商品開発では、海外現地のニーズを従来以上に把握しやすくなり、現地の消費者に受け入れられやすい商品やサービスを提供できることにつながります。

加え、現地特有の商習慣などを理解しやすくもなります。

 こうしたメリットから、産業界では秋入学への移行について、歓迎の姿勢を示してきました。

2011 年6月、経団連は「グローバル人材の育成に向けた提言」を発表し、留学生受け入れの強化を提言しています。

 ただし、秋入学が実施されるとなると、企業は採用をはじめ人材に関するさまざまなルールを見直す必要が出てきます。

現在のところ、各大学とも混乱を避けるため当面は卒業時期が春になる暫定案を提示しています。

ただし、完全に移行となると、学生は4年の夏に卒業を迎えるため、就職活動の時期も変わるでしょう。

また、職場環境では、海外で生まれ育った人については食習慣や宗教などの違いへの配慮、そして持てる能力を十分に発揮できるような体制づくりが必要です。

そのほか、評価制度も含めて新しいルール作りの必要性も出てきます。

 秋入学という大きな変革は、企業にとって負担になる部分があります。

その一方で、積極的に対応することで、結果として企業は国際競争力の向上が期待できます。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)



記事提供 ゆりかご倶楽部





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