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タックスニュース
2012.12.03


2012年12月の税務トピックス



「弁護士会の役員が会の活動に伴い支出した懇親会費等の必要経費算入」(逆転判決)

1.事件の概要

 本件は、弁護士業を営み、地方弁護士会会長並びに日本弁護士会連合会副会長の役員を務めた原告が、これらの役員としての活動に伴い支出した懇親会費等を事業所得の必要経費及び消費税の課税仕入れとして申告したところ、課税庁等によりその全額が否認されたので訴訟を提起したものです。

○原審(東京地裁)は、納税者の主張を斥ける判決(平成23年8月9日判決)

○控訴審(東京高等裁判所)は、納税者の一部を必要経費等と認める納税者勝訴の逆転判決(平成24年9月19日判決)

○上告審;国側上告受理申立て(平成24年10月2日)


2.原審判決の要旨

 @ 弁護士会の役員の活動から生じる成果は、当該活動を行った弁護士個人に帰属するものではなく、弁護士等全体に帰属するものと解され、原告が弁護士として事業所得を生ずべき業務に直接関係して支出された必要経費ということはできない。

 A 弁護士会の活動費(懇親会費等を含む。)が、弁護士業務に有益なことがあってもこれらの支出が弁護士業務の遂行上必要であるとはいえない。

 B したがって、弁護士会における各支出は、事業所得の計算上必要経費として控除することはできない。


3.控訴審判決の要旨

 @ 必要経費で「直接要した費用」と定義づけているのは、売上原価等の費用のみであり、一般管理費等まで「直接要した費用」でなければ必要経費にならないとは、文理解釈上規定してはいない(参考、所法37)。

 A 弁護士会等の活動は、弁護士に対する社会的信頼を維持して弁護士業務の改善に資するものであり、弁護士として行う事業所得を生ずべき業務に密接に関係するとともに、会員としての弁護士の経済的負担により成り立っているものである。

 B したがって、弁護士会等の役員等の業務の遂行上必要な支出(懇親会における二次会費用及び役員立候補に不可欠な費用以外の余分な費用を除く。)であれば、その弁護士としての事業所得の一般管理費対応の必要経費に該当する。

 3.判決評釈
 弁護士会役員活動費のうち役員個人負担として懇親会費並びに役員の立候補費用等が、弁護士個人の事業所得計算上の必要経費に該当するか否かの点については、実務上問題となっていたところです。

 この点につき、東京高等裁判所の判決は、従来の課税庁の取扱に対して「事業所得の一般管理費まで、『総収入金額を得るために直接要した費用』に該当しなければ必要経費に該当しないとすることは拡大解釈である。

また、弁護士会活動は弁護士業務の改善に資するものであることから弁護士個人の事業所得と密接な関係があり、余分な費用を除いては、一般管理費対応として必要経費に算入すべきものである」と判示しました。

この判示は、税理士会の役員活動にも充分通ずるものです。


U 12月の税務
 税繁期に突入する月です。
給与所得の年末調整(最後の給与支払日まで)等通常の月にない業務が発生します。

なお、10月決算法人の申告期限は、翌年1月4日となります。
このように色々な業務が混在しますので秩序よく整理して業務を進めましょう。


記事提供 ゆりかご倶楽部







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