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タックスニュース
23.03.02


平成23年3月の税務トピックス


 T 平成23年2月まで発布された法令等

 〇 欠損金の繰越控除制度の制限にいかに対処するか(法人税関係)

 平成23年度税制改正で法人が有する青色欠損金額、災害損失欠損金額及び連結欠損金額(以下単に「欠損金額」といいます。) の控除限度額は繰越控除する事業年度の繰越控除前の所得金額の80%に制限されることになります。
 ただし、この制限は中小法人等については適用しないこととされています。

 この改正は法人税率の引き下げに伴う課税ベースの拡大であり(欠損金があるのに納税がある)重課だと税理士の間で話題となっていますのでこのことについて検討してみたいと思います。


 (1) 欠損金額の繰越期間の延長(7年間から9年間)をどう考えるか。

 欠損金額の繰越控除金額が80%に制限されることに対して繰越控除期間は2年延長されることになります。
このことについて検討します。

 改正までは欠損金額100を控除するためには、所得金額100が必要です。
改正後は欠損金額100を控除するためには所得金額125(100÷80%)が必要であり25につき法人税が発生します。
しかし、控除期間も併せて検討する必要があります。

 そこでX年に700の欠損金額が生じた場合に改正までと改正後で控除するために毎期の所得金額を100として年数を算定しますと次のようになります。

(改正まで)700÷100=7年
(改 正 後)700÷(100×0.8)=8.75年
 すなわち、改正までは700の欠損金額の全部を控除するためには、7年間が必要であるのに対して改正後は、8.75年(8年9か月)で充分だということになります。

 したがって、単年度で考えた場合には不利なように考えられますが、控除期間の延長も併せて考える必要があります。

 前述の例によれば欠損金額の控除のために要する期間が9年より短い8年9か月で済むこととなり、税額は延長期間で通算された結果その差額(3か月)だけ有利といえます。

 すなわち、改正事項は全体をみて考えるべきだと思います。


 (2) 中小法人等は、どう考えたらいいのか。

 中小法人等は、欠損金額の繰越控除の制限規定の適用もなく、かつ、繰越控除期間の延長(2年間)はそのまま適用されます。

 したがって、中小法人等は改正後は更に有利になると考えて下さい。


 (3) 中小法人等に該当しない法人の対策はどうするか。

 中小法人等に該当しない法人のいわゆる80%制限規定の適用は、欠損金があって納税する制度だから適用を避けたいと願う法人については、当該規定は平成23年4月1日以後に開始する事業年度から適用されますが中小法人等に該当するかどうかは当該事業年度終了の時において資本金又は出資金の額が1億円以下であるかどうかによって判定されることになります。

 したがって、平成23年4月1日開始の事業年度の法人であれば平成24年3月31日までに資本の額を1億円以下に減資すれば80%制限規定の適用はないことになります。


 U 3月の税務

 3月15日までは個人の平成22年分確定申告期です。個人事業者の消費税の申告期限は3月31日です。
 なお、平成22年分贈与税の申告期限又は平成21年分の更正の請求の期限も3月15日です。
 3月は税繁忙期です。これらのことを念頭に効率的な業務を行って下さい。


法学博士・税理士右山昌一郎
記事提供 ゆりかご倶楽部







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