タックスニュース
2011.12.05


横領被害額を虚偽報告!税理士逮捕に残る「謎」?


 社員による着服の被害額を偽り、公正証書を作成させたとして、東京地検特捜部は銀座のクラブ経営者と経理担当者、そして税理士の3人を公正証書原本不実記載の容疑で逮捕しました。


 このクラブでは2007年に、今回逮捕された経理担当者による1億3900万円の着服事件があり、この被害額を4億8500万円と公証人役場に過大申告。

特捜部は、この虚偽申告が法人税を圧縮する目的があったものとして、法人税法違反の容疑でも調べを進めています。

 脱税の容疑が事実なら非常に安易な犯罪だといえます。

被害額にかかる法人税額を単純計算すると、実際の被害額1億3900万円と申告した額の4億8500万円の差は3億4600万円。

法人税の実効税率を40%とすると、1億3840万円の税額を圧縮したことになり、ほぼ被害額と一致します。

着服による損害を、単純に法人税額で穴埋めしたように見えます。

 ここで疑問になるのは、横領の被害額で法人所得を圧縮できるのか、ということです。

横領の被害にあった場合、法人は加害者に対し、損害額に相当する損害賠償請求権を取得しますので、会計上は損金と益金が両建てとなり、損得がありません。

通達では、「他の者から支払を受ける損害賠償金」は、「法人がその損害賠償金の額について実際に支払を受けた日の属する事業年度の益金の額に算入」することも認めるとしていますが、

会社内の従業員は通達中の「他の者」に該当せず、損害賠償金の益金算入は横領の発生時とされる可能性が高いでしょう。

 ある税理士は、「逮捕された税理士が被害額を損金処理したとすると、債権について貸倒損失や引当金としたのだろうか。

横領したとされる経理担当者が不実記載の共犯とされていることも不可解。

税のプロとしてもずさんに見える」と首をひねっています。



<情報提供:エヌピー通信社>



記事提供 ゆりかご倶楽部







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