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220303b


税制メールマガジン 第67号



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◆ 目次

1 巻頭言
2 税制をめぐる最近の動き
3 主税局職員コラム 〜変わるもの、変わらぬ課題〜
4 諸外国における税制について 〜アメリカのチップに係る税金〜
5 編集後記 

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1 巻頭言

 久しぶりの税制メールマガジンになります。前号から大きく間が空いて
しまいましたこと、深くお詫びいたします。

 平成22年度税制改正の内容を盛り込んだ法案が昨日、衆議院を通過し
ました。政府としては今後、参議院の審議を経て、年度内に法案が成立す
るよう取り組んでいきます。

 さて、昨年末に閣議決定した税制改正大綱では、平成22年度の税制改
正とあわせて、新政権としての中期的な税制改革の基本的方向性を示して
おり、今後、これを発展させて、「歳出・歳入一体の改革が実現できるよ
う、税制抜本改革実現の具体的ビジョンとして工程表を作成し、国民の皆
様にお示しする」と定めています。

 税制抜本改革は、成長戦略の策定、中期的な財政運営の方針、社会保障
・税に関わる番号制度、年金を含む社会保障制度改革、さらには低炭素社
会実現に向けた取組に関する政府全体の検討などとも関連した、大きな作
業になります。

 この税制抜本改革に向けた作業は税制調査会において進められていくこ
とになりますが、まずは、3月からは、税制調査会の下の助言機関として
設置された専門家委員会(委員長:神野直彦 関西学院大学教授)におい
て、「80年代以降の内外の税制改革の総括」というテーマで、所得税か
ら順に、各税目について、1980年代以降の内外の税制の変遷に関して、
改革の内容とその背景を検証し、その過程で浮き彫りになった論点などに
ついて議論をはじめることになりました。所得税については、例えば80
年代以降、我が国の所得税の財源調達機能や所得再分配機能が減少した要
因などについて検証し、その中から改革に向けての論点などを抽出してい
くことになるのではないかと思っています。現時点で専門家委員会がいつ
までどういうものを報告するかについては決まっていませんが、今後の議
論の模様については、税制調査会のHPにも掲載されますので、よろしか
ったら御覧ください。

                   主税局総務課企画官 宇波弘貴

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2 税制をめぐる最近の動き

(1)下記のとおり、税制調査会が開催されました。

 【1月18日(月)】
   税制調査会 平成21年度 第26回
    ○専門家委員会の設置等

 【1月28日(木)】
   税制調査会 平成21年度 第27回
    ○プロジェクトチームの進め方、専門家委員会について

 【2月24日(水)】
   税制調査会 第1回 専門家委員会
    ○専門家委員会及び小委員会の検討課題、運営について

 ・税制調査会の資料等は、下記URLにてご覧いただけます。
  https://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html


(2)2月5日(金)、「所得税法等の一部を改正する法律案」及び「租
  税特別措置の適用状況の透明化に関する法律案」が閣議決定され、国
  会に提出されました。
   これらの法案については、現在、国会で審議されています。

 ・法案の内容は、下記URLにてご覧いただけます。
  https://www.mof.go.jp/houan/174/houan.htm

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3 主税局職員コラム 〜変わるもの、変わらぬ課題〜

 昨年の流行語大賞は「政権交代」、「今年の漢字」は「新」、でした。
そのほかにも、「事業仕分け」「脱官僚」、「政」「改」がトップ10に
並ぶなど、例年にもまして、日本中が政治・政府といったものに注目をし
身近に感じた年だったことが分かります。(私も例外ではありません。総
選挙の投開票日は奇しくも私の誕生日でしたが、外食もそこそこに、テレ
ビに釘付けでした。)

 このメルマガの読者の皆さんが特に興味を持っておられるであろう、税
制改正についても、幾つか変化がありました。その一つは税制改正の決定
過程に関するものです。鳩山政権は、税制改正プロセスをより透明なもの
にするために、党と政府の両税制調査会を廃し、政治家のみをメンバーと
する新たな税制調査会を政府に設置しました。また、その議事を原則公開
とし、HP上で審議の中継・配信や資料の公表を行っています(HPは以
下のリンクを御覧ください)。この新たな税制調査会の立ち上げや運営に
私も携わっているため、鳩山首相ご出席の下官邸で行われた初会合に臨席
する機会を得ましたが、歴史の転換を目撃しているようで、身が引き締ま
る思いがしたのを覚えています。同時に、政府の旧税制調査会はその50
年の歴史に幕を閉じることとなり、それもまた感慨深いものがありました。

 他方で、我が国の税制に求められている経済・社会の構造変化への対応
は、新政権においても変わることのない重要な課題です。新たな税制調査
会の初会合で総理から行われた諮問や先般閣議決定された平成22年度税
制改正大綱においても、内外の構造変化に適応した税制を構築していく必
要性が述べられています(諮問文及び大綱は税制調査会のHPに掲載され
ています)。構造変化の中で、税制が期待されている財源調達や所得再分
配等の機能を適切に果たせていないのではないか、という問題意識です。

 政府が提供する財・サービスの財源を調達するという、税制の最も基本
的な機能は、今般の世界経済危機の影響もあり、大きく損なわれています。
例えば一般会計歳出総額に占める租税及び印紙収入の割合は、バブルの頃
は80%程度でしたが、その後の景気低迷を受けて50%台に低下しまし
た。近年の財政健全化努力等によって60%台を回復したのも束の間、2
1年度予算(補正後)においては35.9%、22年度予算においては4
0.5%に落ち込んでいます。50%を割ったのは実に第二次世界大戦で
日本経済が壊滅的被害を受けた昭和20・21年度以来です。上述の税制
改正大綱は、こうした状況を受け、現行税制は「十分性の原則」を満たし
ておらず、支え合う社会の実現に必要な財源を確保することが必要不可欠
だと述べています。

 こうした税制抜本改革の必要性は、景気対策の声にかき消されることも
ありましたが、政治理念の垣根を越えて唱え続けられてきました。新政権
においても、上述の税制改正大綱において中長期的な税制改革の方向性が
示され、巻頭言でも触れているように、税制抜本改革の具体化に向けて取
組みがスタートいたしました。こうした政府の取組みや通常国会における
活発で建設的な議論がより良い税制の構築につながることを願ってやみま
せんし、私も少しでも貢献できるよう努めてまいりたいと思います。

税制調査会HP:https://www.cao.go.jp/zei-cho/index.html

                    主税局調査課  齊藤 郁夫

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4 諸外国における税制について 〜アメリカのチップに係る税金〜

 最近、アメリカ税制の調査をしていて思うことは、その国特有の文化に
根ざした税の仕組みがあるのだなということです。アメリカに旅行をした
り、アメリカで生活したりしますと、日本とは違う文化に気がつきます。
例えば、アメリカでは毎年11月の第4木曜日は感謝祭(Thanksgiving
Day)と呼ばれており、家族や親戚が集まり七面鳥やマッシュポテトなど
の定番料理を囲みます。家賃や光熱費の支払いは日本では銀行引き落とし
やクレジットカードでの支払いが主流ですが、アメリカでは小切手を利用
するところが多かったりします。

 アメリカ文化の中でも、アメリカに旅行した日本人が戸惑うのが、日本
にはない「チップ」という文化ではないでしょうか。タクシーに乗るとき、
ホテルで荷物を運んでもらうときなど、「チップ」を支払う場面にたびた
び出くわします。通例、レストランで食事をした時には、食事の勘定とは
別にウェイトレスやウェイターへの感謝の気持ちを表すために食事の10
%〜20%を「チップ」としてテーブルに置きます(又はクレジットカー
ドの場合には、勘定に上乗せして支払います)。これは日本のサービス料
に近いものですが、「チップ」の額はサービスへの満足度を考慮しながら
お客が自由に決めることができます。この「チップ」はウェイターやウェ
イトレスの重要な収入源となっているのです。

 ではこの「チップ」にはどの様な税金がかかってくるのでしょうか。ま
ず、この「チップ」については前年1年間の間に受け取った額全額を確定
申告時(通常4月15日が締め切り)に給与収入と並びで収入(income)
の中に含めて申告しなければなりません。よって、他の給与所得と同じよ
うに個人所得税が課されることになります(アメリカでは10%〜35%
の累進課税)。また、この「チップ」には日本の社会保険料に当たる社会
保障税(social security and Medicare taxes; 本人負担分7.65%)
も課されます。内国歳入庁(IRS)は1つの職業につき1ヶ月に20ド
ル以上の「チップ」を受け取った場合には、原則次の月の10日までに雇
用主にその月の「チップ」の総額を報告する必要もあるとしています。そ
して雇用主が「チップ」を含めた給与所得から個人所得税や社会保障税の
源泉徴収をすることになります。もし受け取った「チップ」を雇用主に報
告しなかった場合には、ペナルティとして通常の税額に加えて50%の社
会保障税が課される可能性があります。

 しかし、なかなか自分の受け取ったチップを正直に報告しないのではな
いかと思う方もいるかもしれません。そんな場合のためにIRSは大きな
レストランなどの飲食業を営む雇用主に対して、売上の一定額以上(原則
8%)をチップとして報告することを求めています。もし、従業員からの
チップの報告額の合計がその一定額に足りない場合には、その差額を従業
員に割当てなければなりません。そのため、従業員は帳簿などによって自
分の受け取った「チップ」の総額が証明できない場合には雇用主によって
割当てられた「割当チップ」についても収入に含めなければならず、それ
に対して所得税や社会保障税を支払うことになります。

 このように文化が違えば、その文化に応じた税制の仕組みがあることが
わかります。今後もアメリカの文化や背景を理解しながら税制の調査に取
り組んでいきたいと思います。

                      主税局調査課 村木 圭

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5 編集後記

 税制メールマガジン第67号を発行させて頂きます。
 先日、バンクーバーオリンピックが閉幕しました。熱戦に魅入られた方
々も多かったのではないかと思います。冬季の種目は、夏期の種目とはひ
と味違った美しさがあり、日本人が出場しない種目でもじっくり鑑賞して
しまいました。選手の勇姿に元気をもらって、また仕事に励もうと思った
ところです。
 さて、お知らせになりますが、税制HPのトップページに、「平成22
年度税制改正(案)のポイント」のパンフレットの電子媒体を掲載しまし
た。御覧頂ければ幸いです。
https://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/syuzei.htm

 次号は4月上旬発行予定です。お楽しみに。

                             (和田)


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