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タックスニュース
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平成22年3月の税務トピックス



T 平成22年2月までに発布された法令等



○ガーンジー島事件・最高裁判決をめぐって



最近タックス・ヘイブン対策税制の関係で、税務の各雑誌及び新聞で「ガーンジー島事件」を取り上げています。

 そして、この事件は、何が問題で、最高裁判決でどうなったのか、という声が税理士等の実務家から多く寄せられています。

さらにこの事件の判決を通じて「税」という概念が討議された興味のある事件ですから紹介しておきましょう。

 第1に、日本におけるタックス・ヘイブン対策税制(以下「当該税制」といいます。)は、どのようになっているかを述べます。

当該税制は、特定外国子会社等(内国法人・居住者等によりその50%超の株式等を保有され、外国における法人税額相当額の税負担が25%以下である法人)の株式等の5%以上を直接または間接に保有する場合において、

その特定外国子会社等の所得を、その内国法人の所得に合算して課税する制度です(措法66の6、措令39の14〜39の17)。

 第2に、事案は、上告X社(内国法人)は損害保険会社であり英国王室領であるガーンジー島(イギリスとフランスとの間のドーバー海峡内の島)内に100%の損害保険子会社A社を設立して、A社を通じて再保険を行っていました。

ガーンジー税法によると、@年間500ポンド(約70,000円)を支払って免税法人になる。
A標準税率20%を選択する。
B標準税率より低率の税率を選択する。
C国際課税資格の申請をして0%超35%以下の税率を選択する。
という4つの選択肢が与えられていました。

A社は、Cを選択した上で、X社が日本において当該税制の対象とならないことを目的として、26%の税率を選択しました。

 第3に、課税処分は、A社の選択と実行に対してY税務署長は、ガーンジーの法人所得税制は到底租税というに値しないから法人税法69条1項の外国法人税ではないとしました。

そうすると子会社であるA社は法人税負担額を負っていないとのことになるとの理由で、X社に当該税制の適用を受けるとしてY税務署長はX社に対して課税処分を行いました。

 第4に、課税処分に対するその後の経緯は、X社は不服申立手続を経て訴えを提起しました。

一審の東京地方裁判所及び控訴審の東京高等裁判所は、いずれも訴えを棄却しました。

そこでX社は、憲法違反等の多岐にわたる理由をもって上告を行いました。

最高裁判所第一小法廷は、ガーンジー所得税法の定める法人所得税が法人税法69条1項の外国法人税に該当することについての上告受理の申立てのみを受理する決定をして、

平成21年11月5日、口頭弁論を開き、同年12月3日、X社勝訴の判決を言い渡し、課税処分の全部を取り消したものです。

 第5に、この判決の論点について述べますと一審及び控訴審は「外国法人税であるためには、我が国の法人税に類するものでなければならない。」として、選択性がなく、公平性があり、無償性等の属性がなければ税でないとしています。

しかし、「外国法人税」とは、法人税法69条1項で「外国の法令により課される法人税に相当する税で政令で定めるものをいう。」としています。

そして、政令は「・・・法人の所得を課税標準として課される税をいう。」 (法令141@)としています。

 ところで「ガーンジーは、英国王室直轄の王室領として外国であり、その法人所得税はガーンジーの法令であるガーンジー所得税法により法人の所得を課税標準として課される税であり、

外国法人税に該当する。」として全面勝訴を言い渡しました。

そして、税をその属性(選択性なし、公平性、無償性等)から税を判断することは、憲法84条(租税法律主義)に違反する拡張解釈として憲法違反に該当するとして一審判決及び控訴審判決のすべてを取り消したものです。


法学博士・税理士右山昌一郎


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