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Mon,July 10,2023


【時事解説】新自由主義的税制の今後



 ここ数十年、アメリカを中心とした世界の経済界を主として支配してきた思想は「新自由主義」といわれるものでした。

新自由主義は、政府による市場への介入は最低限に抑え、できるだけ個人や企業の自由を尊重した経済活動を進めようとする考え方です。

個人の自由度を最大限広げることが、経済パフォーマンスを向上させる最善の方策だと信じる思想です。

 この思想を貫徹すれば、税制も政府による介入の一種ですから、法人税や所得税の税率はできるだけ低い方が望ましいということになります。

また、国など公的機関においても民間と同様な競争が求められます。

それは、税率の引き下げ競争にとどまらず、個人や企業などが自由な経済活動を行いやすいように制度や設備を整備することも含まれます。

 こうした思想に基づいて、企業や個人が自由な経済活動を行った結果、経済全体が拡大し、拡大した経済の恩恵を受ける形で、最終的に経済的弱者も潤い(いわゆる「トリクルダウン」効果)、

国民全体が豊かになると同時に、税率引き下げ分はパイの拡大でカバーし、税収も大きくは減少することはない、というのが新自由主義の狙いとする経済社会です。

 しかし、実際に起こったことは、先進国では経済の停滞は続き、お金持ちはより豊かになったのですが、その恩恵が低所得層に及ぶことはなく、貧富の格差は拡大しました。

また、国家レベルでは税率引き下げにより法人税収は落ち込む一方、低所得層対策のための福祉支出に加え、近年ではコロナ対策のための経費が追い打ちをかけて、財政赤字の拡大を招きました。

 民間においては、個人の創意工夫を最大限に活かして、経済発展しようとする新自由主義的思想は、賛否はあるでしょうが、昔からあり、今後ともなくなることはないでしょう。

しかし、それを公的な税制にまで適用することは、どんなに高邁な理想を述べたところで、終局的には、税率引き下げ競争に終始し、トータルとすれば税収の落ち込みを招くだけの結果になることが明確になったのだと思います。

 こうした競争的要素を取り入れた新自由主義的税制は国内にもあります。

その代表はふるさと納税です。

ふるさと納税のそもそもの発想は、税収を国から交付される地方交付税ばかりに頼るのではなく、地方自治体にも競争原理を導入し、特色のある政策を実行することで魅力ある自治体になり、そこに住んではいないが、そうした自治体を応援したいと考える人々から住民税を納めてもらい、そのお礼として返礼品を送る、というものであったはずです。

ところが実態は、魅力ある地域づくりという理想はそっちのけで、返礼品の良し悪しを巡る競争に堕してしまっています。

 今では、商品券を配るといったような行き過ぎた返礼品競争はある程度是正されたようですが、それでも税率引き下げ競争の実態に変わりはありません。

国民全体が納付する住民税額は同じなのですから、トータルで計算すれば、返礼品の分だけ、日本全体の地方自治体が受け取る住民税額は減少するのは自明です。

これから福祉や医療制度の充実のために益々公的サービスの拡充が求められる中で、住民税が主として富裕層が得をする返礼品に消えてしまうのは合理的とは言えません。

 世界的に新自由主義的税制の見直しが叫ばれていることから、ふるさと納税が今後どのように変わっていくか(あるいは変わらないのか)が注目されます。


(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)


記事提供:ゆりかご倶楽部


[Studying English]





参考URL


国税庁HP新着情報(国税庁トップページ)NATIONAL TAX AGENCY


7月10日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:2023年7月7日

≪税の情報・手続・用紙≫
●「酒のしおり(令和5年6月)」について
●輸出証明書システム操作マニュアル(酒類事業者向け)の変更について

≪お知らせ≫
●「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」(法令解釈通達)等の一部改正(案)に対する意見募集の結果について


■財務省

財務省 各年度別の税制改正の内容

総務省  税制改正(地方税)

ご意見箱 財務省

法令解釈通達 |国税庁

消費税の軽減税率制度について|国税庁

国税不服審判所/公表裁決事例
国税庁/税務訴訟資料
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