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タックスニュース
Monday, August 13, 2018


【時事解説】内部留保があるから、投資を増やせるのか


 日本の企業は内部留保をためすぎ、資金を積極的に投資や賃金の増加に振り向けないから、日本経済は低成長にとどまるのだと批判されています。

また、経済の好循環を持続させるためには、企業の積極的投資増や賃金増加が不可欠だとして、政府側から経済団体に異例の働きかけが行われています。

しかし、内部留保が多いから、投資を増やせるだろうという議論の展開には違和感を覚えます。

 まず、会計面の整理をしておきましょう。

新聞等を見ると、「内部留保」という言葉は「余裕資金」と混同して使われている場合が多いようですが、会計的にはその両者は明確に区別されます。

内部留保とは事業活動によって生じた利益の蓄積であり、会計的には利益剰余金として自己資本を構成します。

内部留保は貸借対照表の貸方に出てくる項目です。これに対し、余裕資金は資産の一つとして現金預金(または有価証券)として表示されますから、借方項目になります。

したがって、内部留保と余裕資金は直接的につながるものではなく、会計的にはまったく別個に存在します。

貸借対照表の貸方は、資金の調達源泉を示し、内部留保が多ければ、自己資本が多く、財務的に安定していると評価できます。

しかし、だからといって、必ずしも余裕資金が多いということにはなりません。

内部留保による利益蓄積を固定資産や在庫につぎ込んでいれば、手持ちの現金が薄いということもあり得るのです。

 このように会計的には内部留保の大きさは余裕資金の大きさを保証するものではありません。

ただ、内部留保が厚い会社は余裕資金を多額に抱えていることが多いのも事実ですので、以下では、内部留保≒余裕資金として話を進めます。


 「企業経営者は余裕資金(内部留保)が多ければ、工場などの設備投資を増やすでしょうか?」

このように聞かれると、答えにくいかもしれませんので、少し質問の仕方を変えましょう。

 「設備投資を行う一番の要因は余裕資金が大きいことでしょうか?」この答は簡単です。明確に否です。

 カネがあるから設備投資をするというのは合理的な経営判断ではありません。

設備投資を行うのは、将来の売上が増えたり、経費が削減され、利益が拡大することが見込まれるからです。

現在、手元に余裕の資金があるかどうかは、設備投資を決定する主要因ではありませんし、また、あってはいけません。

将来の利益拡大効果が見込まれるにもかかわらず、現在手元に資金がないのであれば、借入を起こして、資金を手当てすればいいだけの話です。

資金手当ての問題は投資においては二次的な問題に過ぎません。

 投資は今カネがあるから行うのではなく、将来収益が上がると予想できるから行うのです。

つまり、投資のポイントは入口ではなく、出口です。

そうした意味で、内部留保(余裕資金)があるから、投資をしろというのは入口の問題に過ぎず、的外れな要請と言わざるを得ません。

政府がなすべきことは、企業の意思決定に直接介入することではなく、規制緩和や市場拡大など経営者に投資を拡大したいと思わせる経済環境の整備、すなわち魅力ある出口の創出だと思います。


(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)


記事提供:ゆりかご倶楽部





参考URL


国税庁HP新着情報
8月13日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:平成30年8月10日


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●「放射性物質に対する酒類の安全性確保のための施策について」を更新しました。



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