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Friday,February 16,2018


2018年2月の税務トピックス 個人事業者の所得拡大促進税制の活用


はじめに

 税理士にとって最も多忙な時期である個人の確定申告が始まります。

税理士事務所においても、確定申告終了後に頑張った事務所職員に対して特別ボーナスを支給するケースも多いようです。

 平成29年度税制改正では、個人事業者の収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の「好循環」を強化するため、

所得拡大促進税制における個人事業者に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う個人への支援が強化されました。

 そこで、本稿では、個人事業者が所得拡大促進税制を適用する場合における留意点について解説します。


T 制度の概要(措法10の5の4@)

 青色申告書を提出する個人が、平成26年から平成30年までの各年(事業を廃止した日の属する年を除きます。)における雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上である場合において、

次に掲げる適用要件のすべてを満たすときには、その年分の総所得金額に係る所得税から雇用者給与等支給増加額の10%相当額の特別税額控除ができます。

 ただし、特別税額控除額については、その年分の調整前事業所得税額の10%相当額(中小事業者については、20%相当額)が限度とされます。

@ 増加促進割合について適用年が平成29年である場合には4%(中小事業者:3%)及び平成30年である場合には5%(中小事業者:3%)以上であること。

A 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること。

B 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を上回ること。


U 平成29年度税制改正

(1) 平均給与等支給額の増加要件の見直し(措法10の5の4@二ロ,措令5の6の4O)

 中小事業者以外の個人について、平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えることとの要件が、平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した金額(以下「平均給与等支給増加額」といいます。)のその比較平均給与等支給額に対する割合(いわゆる「賃上げ率」)が2%以上であることとの要件に見直されます。
 また、中小事業者以外の個人の平均給与等支給額に係る要件につき比較平均給与等支給額が零である場合には、その要件を満たさないこととされます。

(2) 特別税額控除率の上乗せ(措法10の5の4@)

 特別税額控除額について、賃上げ率が2%以上である場合には、雇用者給与等支給増加額の10%と雇用者給与等支給増加額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額の2%(中小事業者:12%)との合計額とされます。

(3) 適用関係(平成29年改正法附則48)
 上記(1)及び(2)の改正は、個人の平成30年分以後の所得税について適用され、平成29年分以前所得税については、なお従前の例によります。


V 用語の定義

 上記T及びUにおける主な用語の定義は、次のとおりとされます。

@ 雇用者給与等支給増加額
 雇用者給与等支給額から基準雇用者給与等支給額(平成25年分の給与等支給額とされます。)を控除した金額とされます。

A 雇用者給与等支給額
 適用年の年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入される国内雇用者(個人の使用人(特殊関係者を除きます。)のうち個人の有する国内の事業所に勤務する雇用者として労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載された者とされます。)に対する給与等支給額(その給与等に充てるため他の者から支給を受ける金額がある場合には、その金額を控除した金額)とされます。

B 比較雇用者給与等支給額
 適用年の前年分の雇用者給与等支給額(適用年の前年において事業を開始した場合(相続により事業を承継した場合を除きます。)には、その給与等支給額に12を乗じて適用年の前年において事業を営んでいた期間の月数で除して計算した金額)とされます。

C 中小事業者の範囲(措法10G五,措令5の3H)
 「中小事業者」とは、中小事業者に該当する個人で青色申告書を提出しているものとされます。このうち、「中小事業者」とは、常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人とされます。


おわりに
 公表された平成30年度税制改正大綱(平成29年12月22日閣議決定)においては、基準年(平成25年分)が撤廃され、雇用者給与等支給増加額の計算が前年との比較とされています。
また、賃上げ率1.5%以上を実施した中小事業者では、控除率が15%とされ、大事業者並みの高い賃上げ率2.5%以上を実施するとともに人材投資又は生産性向上の実施が証明された場合には控除率が25%とされています。

 これら税制改正を考慮すると税理士事務所においても事務所職員の昇給及び特別ボーナスの支給も工夫する必要がありそうですね。


税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹


記事提供:ゆりかご倶楽部





参考URL
平成29年分 確定申告特集
平成29年分の確定申告においてご留意いただきたい事項(平成30年1月)

国税庁HP新着情報
2月16日朝時点での新着情報は、以下の通りです。

国税庁ホームページ掲載日:平成30年2月15日

●競馬の馬券の払戻金に係る課税について(平成30年2月)
●酒税課税状況表(平成29年度11月分)について



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