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190815


意外と使えない? 相続時精算課税制度の自社株特例



 平成19年度税制改正で新たに用意された「相続時精算課税制度の自社株式特例」について、「意外と使いにくいのでは?」という話がでてきています。

 同特例は、後継者である子供に自社株式(非上場株式)を贈与する場合、60歳以上(本則65歳以上)の親からの贈与を認めるとともに、非課税枠が3000万円(本則2500万円)となる制度です。

中小企業の早期かつ計画的な事業継承の促進を図るという目的で導入されました。

 注目されているのは、同特例を受けるための条件の一つとして、「特例選択後4年経過した時点で受贈者が発行株式数と議決権の50%超を所有し、代表者としてその会社の経営に従事していること」という条件があることです。

 具体的には、選択年の翌年3月15日から4年を経過する日を確認日として、確認日の翌日から2ヶ月以内に、受贈者が「発行株式数と議決権の50%超を所有し、代表者としてその会社の経営に従事している」ことを証する確認書の提出が義務付けられます。

もし提出しなかった場合は、特例の適用を受けることができず、各年の贈与税について修正申告書を提出しなければなりません。

 そして、先日公開された国税庁の通達では、この修正申告に係る贈与税額について、暦年課税で計算することが留意的に明記されました。

暦年課税というのは、通常の贈与税の取り扱いですから、非課税枠110万円、最高税率50%(課税額1000万円超の場合)で贈与税額を計算することになります。

 一方、相続時精算課税制度の適用を受けずに株式等の財産を相続した場合は、非課税枠は最低でも6000万円となり、税率面も贈与税よりずっと有利です。

また、親の年齢が65才になってから相続時精算課税制度の適用を受けた場合には、同特例のような条件はありません。

 つまり、同特例を利用した場合、選択した4年後になんらかしらの事由で受贈者が上の条件を満たしていなかった場合、税額的に著しく不利な贈与税が強制的に課せられてしまうことになります。

絶対確実な後継者がいない限り、同特例を利用することには大きなリスクが伴うことになるのかもしれません。






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