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税制メールマガジン 第28号 財務省


税制メールマガジン 第28号                 2006/06/01 

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◆ 目次

1 巻頭言 〜転ばぬ先の杖〜
2 税制をめぐる最近の動き
3 子供達に明るい未来を
4 諸外国における税制の動き 〜アメリカ税制の時限規定〜
5 編集後記

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1 巻頭言 〜転ばぬ先の杖〜

 90年代の欧米先進諸国における財政再建は目覚しいものでした。その
間、失われた10年(ロスト・デケイド)と言われた日本では、財政はほ
ぼ悪化の一途を辿っています。欧米先進諸国では、歳出削減と歳入増が並
行して行われましたが、その中味をみると、どの国でも社会保障給付の削
減や増税といった、国民的賛同を得にくい課題に取り組んでいます。

 いったい、どうして90年代の欧米先進諸国ではそうした国民的苦痛を
伴う財政再建が受忍されたのか、不思議でさえあります。日本ではなかな
か許容されないそうした課題が、欧米ではなぜ国民的な理解を得たのでし
ょうか。

 80年代の終わりから90年代の初頭にかけて、欧米先進諸国はいずれ
も不況にあえいでいました。その原因は、あれこれ考えるまでもなく、高
金利でした。アメリカでは12%ほど、イタリアでは14%にまでなって
いました。金利が高いために、よほどのリターン(収益)が見込めない限
り借金して設備投資に手を出すことは危険でしたし、よほどの頭金が整わ
ない限りローンを組んで住宅を購入することも危険でした。そして、その
高金利の原因は何かというと、国や地方といった政府部門の財政状況(パ
フォーマンス)があまりにも悪いために、公債発行で資金市場からお金を
吸い上げすぎていたという構図にありました。

つまり、当時の欧米先進各国は、

「 財政赤字 → 高金利 → 不況 」 ・・・ (※)

という流れ(スパイラル)に陥っていたのです。不況から脱出するために
は、金利を下げねばなりませんでしたし、金利を下げるためには財政状況
を改善する必要がありました。すなわち、経済のパフォーマンスを良くす
ることと財政のパフォーマンスを良くすることが、同じベクトルを向いて
いたのです。

 これに対し、日本では、「財政再建をすれば景気にマイナスの影響が出
る」とか、「景気を良くするためにはある程度の財政出動もやむを得ない」
などと言われがちで、経済を良くすることと財政を良くすることとは逆向
き(バッティングする)と考えられがちです。あっちを立てればこっちが
立たず、とか、二兎は追えない、などとも言われます。

 欧米と日本でどうしてこのような違いがあるかと言えば、その鍵は、金
利水準の違いにあります。高金利だった欧米では、財政再建によって景気
を良くすることが可能でしたが、低金利の日本では、財政再建が金利低下
を通じて景気をよくする余地は乏しいのです。

 しかし、実は、日本と欧米の状況は根本的には同じです。日本も、今の
ままの多大な財政赤字を続けていたら、いずれ財政は間違いなく破綻し、
金利が上昇します。また、金利が上昇した場合、債務残高のGDP比が世
界最悪(最大)となっている日本では、金利が上昇した場合のダメージす
なわち利払費の増幅やそれに伴う増税の必要幅は世界最悪です。ですから、
上記の(※)のような状況が今起きているか、いずれ起こるか、単に“時
間の問題”でしかないのです。

 このまま歩いていたらいずれ「転ぶ」ことが明らかであり、かつ、転ん
だ場合の痛手が世界最悪であることも明らかであるのに、「転ばぬ先の杖」
をつかないという選択肢があり得るでしょうか。

                              主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 税制をめぐる最近の動き

下記のとおり、税制調査会が開催されました。

【5月9日(火)】
 第43回総会・第52回基礎問題小委員会合同会議
 ・地方財政について
 ・1990年代以降の財政政策運営について

【5月12日(金)】
 第44回総会・第53回基礎問題小委員会合同会議
 ・個人所得課税について

【5月23日(火)】
 第45回総会・第54回基礎問題小委員会合同会議
 ・資産課税について
 ・納税環境整備について

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。

  http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。
 (順次、掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がござい
 ます。)

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

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3 子供達に明るい未来を

 先日、同僚と話していて、この同僚の息子さんが、私が卒業した小学校
に通っていることが分かりました。私の小学生時代は、1学年4クラスあ
りましたが、今や1学年2クラスになっているとのこと、あらためて少子
化の進展を実感させられました。
 
 昔が懐かしくなり、週末、小学校の周辺を訪ねてみました。30年近く
も前のことですから、当たり前と言えば当たり前ですが、環境が様変わり
していることに驚きました。放課後、毎日のように野球をした公園は跡形
もなくなり、魚釣りやザリガニ取りを楽しんだ池は、庭園式の立派な公園
に整備され、錦鯉が悠々と泳いでおり、今や魚釣りなどできる状況ではあ
りません。昔なら春の週末ともなれば、たくさんの親子連れが訪れ、とこ
ろ狭しと釣り竿が並んでおりましたが、今やひっそりとしていました。ふ
と、「自分が小学生の頃にこんな状況だったら、自分は一体何をして遊ん
でいたのだろう。」「最近の子供達は何をして遊んでいるのだろう。」と
思ってしまいました。
 
 こうした遊び場の話だけではありません。最近、幼い子供達が犯罪の被
害者になる悲惨なケースが多発しています。われわれ親の世代にとって、
子供達が安心・安全に楽しく暮らしていけるような社会の維持・再構築が
大きな課題であり、また重大な責務であると思います。「子供達が暮らし
やすい社会を実現する」、「子供達の視点にたって社会を構築していく」、
そうした一環として、税制を含めた財政問題を考えていくことも必要だと
思います。

 我が国財政を家計に置き換えてみると、1ヶ月の月収約40万円のサラ
リーマンが、月々、家計費で約37万円、田舎への仕送りで約12万円、
ローン元利払いで約15万円の出費が必要であり、不足分の約24万円を
借金していることになります。また、ローン残高は月々累増し、今年度末
には約5,200万円にも上ることになります。家計の場合、そもそも、
5,000万円を超える借金があるにもかかわらず、月々20万円超の借
金を続けられること自体あり得ないことかもしれませんが、どの親も、こ
うした借金や借金体質を自分の子供に残す訳にはいかないと思われること
でしょう。

 我が国財政も、いずれは、われわれのような親の世代から、子供達の世
代に引き継がれます。子供達に膨大な借金や借金体質を残すことは避けな
ければなりません。先程の家計の場合には、子供は相続放棄をすれば親の
借金を逃れることはできますが、国の場合には、子供達は、海外へ移住す
るとか日本国民ではなくなるということでもしなければ、借金を逃れられ
ません。子供は意見を言うことができないまま、避けることのできない負
担を押しつけられてしまう、ということになってしまうのです。財政問題
については、我々「大人」の世界での受益と負担という観点からの議論が
重要なのはもちろんですが、「大人」と「子供」といった観点からも見つ
めることが大事だと思います。

 動物園や遊園地で楽しそうに遊んでいる大勢の子供達を見るたびに、ふ
と、「この子達に多額の借金を残してはいけない。」「将来、多額の借金
を押しつけられた彼らはどうなってしまうのだろうか。」と思う瞬間があ
るといえば、それは職業病でしょうか・・・。

                    主税局税制第一課 堀内 斉

・我が国の財政を家計にたとえたら・・・
 http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014/sy014b.htm

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4 諸外国における税制の動き 〜アメリカ税制の時限規定〜

 今回は、アメリカ税制における時限規定にスポットライトを当ててみた
いと思います。

 先日(5月17日)、アメリカにおいて「増税回避調整法」という名称
の税制改正法が成立しました。この法律は、配当・長期キャピタルゲイン
に対する税率の軽減措置や、2005年末に失効していた代替ミニマム税(注)
という制度の負担軽減措置などの時限措置の延長を主たる目的とする法律
ですが、昨年の4月頃より検討が開始されてから成立までに1年程度を要
しており、単に時限規定を延長するにしては審議が難航した法律でした。
また、今後ともアメリカ議会では2005年末に失効した様々な時限措置
の延長法案が審議される予定であると言われています。

 現在のアメリカ税制には、数多くの時限規定が設けられています。例え
ば所得税率は現在10〜35%ですが、この税率は時限的に引下げられて
いるものであり、現状のままでは2011年には15〜39.6%に引上
げられます。遺産税などは、2010年に一旦廃止される予定ですが、こ
れも時限規定のため、2011年には再び復活するという奇妙な規定にな
っています。

 日本においても、租税特別措置法において多くの時限規定が設けられて
おり、必ずしもその数が少ないとは言えません。しかし、日本の場合には、
慣例的に予算編成作業と並行して税制改正作業が行われ、年度末までに税
制改正法案が国会において審議されるといった定型的なサイクルがあるた
め、ある程度税制改正の内容も予測し易く、また時限規定についても毎年
しっかりと審議され、存続の是非が決定されていると言えます。これに対
し、アメリカの場合には、税制改正法案の審議におけるこうした慣習はほ
とんど無いに等しく、また上下両院の独立性が高いこともあり、しばしば
両院で成立した法律の内容が異なるといった事態が起こるため、どの時点
で税制改正法が成立するのか、またどういった内容の税制改正となるのか、
予測が非常に困難な面があります。

 こうした議会審議の特徴と数々の時限措置の存在により、アメリカ税制
はかなり不安定なものになっていると言われています。例えば前述の代替
ミニマム税については、今回の税制改正による負担軽減措置の延長がなけ
れば、年収1,000万円の夫婦子2人の給与所得者にとって、2006
年の所得税額が約20万円程度(場合によってはもっと大きく)増加して
いたかもしれないという程度の効果を持っています。納税者は自分の今年
の税負担が20万円多くなるのかどうかが今年になっても分からないとい
う状態に置かれていたわけです。

 税制の負担と言えば税額に目がいきがちですが、こうした税制の不安定
さというのも見えない負担と言えるのではないでしょうか。

(注)代替ミニマム税とは、通常の所得税の計算とは別に、租税優遇措置
などについて再計算した別の計算を行わせ、高い方の税額を所得税とする
制度です。

                     主税局調査課 馬場 啓明

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5 編集後記

 COOL BIZ(クール ビズ)の時期になりました。地球温暖化防止への取組
みの重要性、そして何より仕事をする上での快適性を考えると、この取組
みはますます広がっていくのではないかと思っています。昨年はこの取組
みが定着するのかどうか様子見だったこともあり、上着を脱いでネクタイ
を外しただけという、あまり様にならない格好で期間を過ごしましたが、
今年は1歩踏み込んで、クールビズ向けのワイシャツを購入し、服装も
「クール」を目指せたらと秘かに思っています。次回発行は6月下旬の予
定です。(角田)

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

このメールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm

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