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税制メールマガジン 第26号 財務省


税制メールマガジン 第26号                 2006/03/31 

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◆ 目次

1 巻頭言 
    〜バブル崩壊後のツケの返済と今後の社会保障費の増への対応〜
2 税制をめぐる最近の動き
3 モデル租税条約の進化 〜OECDの議論の現場から〜
4 公務員の総人件費改革
5 中国の「見えない消費税」 〜増値税(ぞうちぜい)とは何か?〜
6 編集後記

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1 巻頭言
    〜バブル崩壊後のツケの返済と今後の社会保障費の増への対応〜

 財政再建に関する講演をしていると、往々にして、「日本の財政事情が
大変なのは分かったが、でも一体どうしてそんな借金大国になってしまっ
たのか」とか「その責任の所在をまず明らかにしてもらわないと財政再建
に協力はできない」といったお叱りをいただくことがありました。

 わが国の財政赤字は、あまりにも肥大化し常態化してしまっているため、
ともするとずっと昔から借金漬けで借金と共生して来たかの錯覚もありま
すが、昭和40年までは無借金国家でした。すなわち、戦後約20年間、
その年の税収等で歳出を賄ういわゆる「均衡財政主義」を貫いていたので
すが、昭和40年不況と呼ばれる経済情勢の下で国債の発行を余儀なくさ
れました。しかし、昭和40年代の国債発行はさほど巨額なものではなく、
債務残高の累増も比較的緩やかなものでした。この勢いが急速に悪化した
のは昭和50年代に入ってからです。2度のオイル・ショックを経験した
ことや、先進国首脳会議で提唱された「機関車論」により内需拡大を求め
られたことによるものです。以来今日に至るまで、事実上わずか30年ほ
どで世界一とも言える借金大国になったのです。30年といえば、今で言
う「一世代」ですから、日本は一世一代の借財を積み上げた格好です。

 昭和50年代に入ってから、見合いの資産が将来に残らないいわゆる赤
字公債(特例公債)を毎年発行するようになり、このままではいけないと
いうことで、赤字公債依存体質から抜け出そうと「特例脱却目標」が掲げ
られました。土光臨調による「増税なき財政再建」といった議論が真剣に
行われ、歳出削減が繰り返されたのも昭和50年代です。

 平成2年に特例公債発行からようやく脱却したものの、バブルの崩壊に
よって、財政支出はかさみ、税収は激減して、再び財政難に陥りました。
これに高齢化のうねりが追い討ちをかけたのです。実際、平成2年のバブ
ル崩壊後の直近15年間で、現在の国債残高のちょうど7割までもが積み
上がりました。その要因は、端的に言えば「景気対策」によるものと「社
会保障関係費」の増によるものです。

 「景気対策」の中には、商品券のバラマキとも言われた地域振興券、借
金王による施しとも言われた恒久的減税、金融救済とも言われた公的資金
注入、ゼネコン救済とも言われた公共事業の補正追加などがあります。当
時大蔵省は、消費性向を高めるには効果が薄いとか、財政政策によるべき
ではないなどと主張もしましたが、「日本発の世界恐慌を起こしてはなら
ない」といった深刻な経済危機意識の下、あの手この手で瀕死の日本経済
をとにかく救うことが与野党を問わず広く国民的世論として求められたの
です。

 一方、「社会保障関係費」の増は、年金、医療、介護などの社会保障に
必要な税財源(国庫負担)が、世界一の長寿化等による高齢化の進展に伴
って肥大化したのです。

 だからといって、財務省には責任がないなどと主張するつもりはありま
せん。しかし、バブル崩壊後の「景気対策」と世界一の高齢化による「社
会保障関係費」の増がもたらした債務の返済(減債)は、他ならぬ私たち
日本人自らの手で片付けねばなりませんし、今後2025年になっても2
050年になっても実はピーク・アウトしない高齢化の進展に向けて、私
たちは「受益」と「負担」の乖離の拡大に苦渋の対応をし続けねばなりま
せん。この問題は、「数合わせ」とか「帳尻合わせ」などと批判してみて
も決して解決しない日本の宿命的課題です。

                              主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 税制をめぐる最近の動き

 下記のとおり、税制調査会が開催されました。
 
【3月10日(金)】
 第40回総会・第49回基礎問題小委員会合同会議
 ・社会保障制度について

【3月28日(火)】
 第41回総会・第50回基礎問題小委員会合同会議
 ・財政の長期試算について
 ・財政政策ルールと海外の事例について

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。

  http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。
 (順次、掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がござい
 ます。)

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

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3 モデル租税条約の進化 〜OECDの議論の現場から〜

 現在の経済社会の特徴を一言で表現するならば「グローバル化」ではな
いだろうか。幸か不幸か、あるいは様々なデメリットも持ちながらも、こ
の動きは進化・加速しつつあり、我々は後戻りできない状況である。税の
現場でも「グローバル化」への対応が重要な課題となっている。その一つ
の方策が「租税条約」の締結による「国境をまたぐ経済活動に対する各国
間の課税権の調整」であり、その際のポイントは「二重課税と二重非課税
(あるいは国際取引を用いた租税回避行為)」の両方の防止である。

 各国が2国間の交渉により「租税条約」を締結するにあたって元にする
ものが「OECDモデル租税条約」である。これはOECD(注:パリに
本部をもつ国際機関。加盟国は先進国が中心。29ある委員会のうち租税
委員会が税の分野を担当する。)理事会が採択、加盟国に対してこのモデ
ルに準じて租税条約の締結・改定を進めるよう勧告しているものである。
このモデル条約及びその解釈や実際の運用等に関するコメンタリーが一冊
のA4版の本にまとめられている。現実の租税条約交渉においても、各国
ともこのモデル条約を参照して行われ、筆者を含め世界の条約担当者の手
元には必ずこの一冊の本が手元に置かれている。(注:なお、興味深いこ
とに世界中にモデル条約と全く同じ二国間条約は存在しないという。)

 租税条約の歴史は、古く国際連盟により取り組まれた1928年のモデ
ル条約にさかのぼるとされ、戦後OECDがこの分野に力を注ぎ、196
3年に最初のOECDモデル条約を採択し、その後、数度の改訂を経て、
今日に至っている。最近の改訂は、昨年行われたものであり、当局間情報
交換に係る規定を充実させるものであった。

 現在のポストに就いて1年弱あまり、OECDの会議に何度か参加する
機会を得た。他の国の参加者をみると、この道10年以上といった強者が
珍しくなく、議場や議場外で筆者の主張・意見に対し、歴史を紐解いてや
さしく説明をいただいている。得てして、日本の発言は「現行の日本の国
内法に即して、その許容範囲内であるかどうか」の視点にとどまり、「あ
るべき国際的な租税」「世界経済の潮流に将来を見通した国際租税の方向」
の視点が欠けるのではと自らを省みながら、できる限り前向きに議論に参
加していこうとしているところである。
 
 現在、OECDでは、国際的な企業再編、投資信託等集合的な投資スキ
ーム、IT等を通じた(物理的に相手国に所在することなく行われる)国
際取引等に対して、ビジネス上の正当な活動を税が阻害することがないよ
うに如何に適正な課税を行うか、またタックスヘイブン国・地域や国際取
引を通じた税回避行為にどのように対するべきかといった議論が積極的に
行われている。数年前までは想像だにしなかった仕組みが次々と生まれる
状況に対して、その国際標準つくりに向けて議論が行われているのである。

              大臣官房企画官(国際租税担当) 大西 靖

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4 公務員の総人件費改革

 年末の税制改正のあと、行政改革の仕事をさせていただいております。
昨年夏まで税の広報の仕事をしておりましたが、税の話をする前に必ずと
いってよいほど指摘されるのが、公務員の仕事や給料のことだったことの
意味をあらためてかみ締めています。

 さて、個人的な体験で恐縮ですが、福岡市で2002年夏に開催された
「第5回アジア太平洋都市サミット」の事務方として働いたときの話を、
まず紹介させていただきます。

 この時の基調講演者として初来日されたのが、アメリカにおける行政改
革の指導者の1人であるデビッド・オズボーン氏でした。彼の著作「行
政革命」は、日本でも、「新しい行政改革」を語る際に必ず引かれるもの
となっていると思います。基調講演では「いま世界は、工業化社会から情
報化社会へ大きく変わりつつあり、その変化に対応した行政改革が求めら
れている。」との認識の下、「これまでの官僚機構は、標準化されたサー
ビスを大衆マーケットに平等に提供し、20世紀にはうまくいったモデル
だった。」とし、「しかし、グローバル時代の民間企業は、情報通信技術
を使って劇的にサービスの質を向上させている。市民のニーズも多様化、
高度化している。硬直的な官僚機構ではこれに対応できず、毎年コストば
かりがかさむ。コストがかさんで税金が上がれば、その国や地域の企業や
市民は競争力を失う。逆に行政コストが下がると、その地域の企業や市民
にとっては利点となる。だから官僚機構を改革しなければならない。」と
指摘されました。官僚組織にも新しい「ビジネスモデル」が求められてい
るということでしょうか。近年において、洋の東西を問わず、広く共有さ
れる認識になりつつあるように思います。

 現在、政府は、その規模の大胆な縮減に向けて、公務員の総人件費改革
に取り組んでいます。この背景には、オズボーン氏が指摘するような時代
状況もあると考えます。

 具体的な取組としては、

(1) 国家公務員について、厳格な定員管理を行うとともに、民間の有識者
 の知見も活用しつつ、業務の大胆かつ構造的な見直しを進めることなど
 により、その数を今後5年間で5%以上純減する。また、給与について
 も、横並び・年功序列の給与体系を抜本的に改めるとともに、給与水準
 も民間の給与実態に合わせたものとなるよう見直しを行うこととしてい
 ます。

(2) 地方公務員についても、4.6%以上の純減を要請し、各地方公共団
 体において厳格な職員数の管理を行うとともに、国家公務員に準じた給
 与制度の見直しを行うこととしています。
  このうち、国家公務員の業務の見直しによる5%純減については、遅
 くとも本年6月までに政府の方針として決定することとされており、そ
 の検討のため、広く皆様からのご意見を募集しております。例えば、国
 の行政機関の仕事について、例えば「地方や民間に任せたほうがよいの
 ではないか」とか、「国家公務員が必要以上に多く配置されているので
 はないか」といったことなど、お気づきの点がありましたら、専用ホー
 ムページからご意見をお寄せいただくよう御願いいたします。

  http://www.gyoukaku.go.jp/soujinkenhi/

     主税局総務課主税企画官
     兼内閣官房行政改革推進事務局公務員制度等改革推進室企画官
                             渡部 晶

(参考)

○内閣官房行政改革推進事務局のホームページ

  http://www.gyoukaku.go.jp/

○デビッド・オズボーン〜「行政革命」(共著 邦訳1995年刊)
(原題:REINVENTING GOVERNMENT 1992年刊)や「脱官僚主義」(共
著 邦訳2001年刊)(原題:BANISHING BUREAUCRACY 1997年刊)
などの著作があるほか、米クリントン政権でゴア副大統領が行った行政改
革運動であるナショナルパフォーマンスレビューの上級アドバイザーをつ
とめた、著名な行政改革のコンサルタント。直接お会いした際、仕事上か
なり厳しい場面を経てこられたにもかかわらず、きわめて温厚で紳士的な
物腰であったことや、行政改革は大変な仕事であり、それを進めようとす
る福岡の人々にも敬意を表するとして、惜しみなく暖かなはげましをされ
ていたことが今でも強い印象として記憶に残っております。

○アジア太平洋都市サミット

  http://www.city.fukuoka.jp/asiasummit/

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5 中国の「見えない消費税」 〜増値税(ぞうちぜい)とは何か?〜

 中国とわが国の間で人の行き来が盛んになってきていることは言うまで
もありません。わが国から中国への訪問者は年間330万人にのぼり(2
004年、国際観光振興機構(JNTO)調べ)、横浜市の人口に匹敵する
ほどです。読者の皆さんのなかにも、観光やビジネスで中国にいらした方
が多くいらっしゃると思います。ですが、中国にいらした方の中で、ショ
ッピングをした際の代金に税率17%の消費税が含まれていることに気づ
いた方は、あまり多くないのではないでしょうか?「財務省作成の資料だ
と中国には消費税があることになっているが、自分が中国に在住していた
際に消費税を払った覚えが無い」といった声を聞いたこともあります。

 わが国の消費税にあたる税は、中国では「増値税」と呼ばれます。「増
値」とは何かというと、「増」=付加、「値」=価値の意味ですので、欧
州の消費税である「付加価値税」(Value Added Tax)を直訳すると増値税
になります。1994年に導入され、税収は7,300億元(10兆円)
とわが国の消費税の税収(11兆円、平成18年度予算)とほぼ同じ規模
にのぼり、国税収入の約5割を占めています。(わが国の消費税の税収は
国税収入の約2割です。)

 これほど規模の大きな税であるにも関わらず、増値税が存在することは、
中国在住の外国人どころか、中国国民の多くにも知られていないと言われ
ています。日本の感覚からすると、不思議な気がしますが、その背景とし
ては、まず、増値税が法律で定められたのではなく、わが国の政令にあた
る国務院令を根拠としていることが考えられます。すなわち、増値税とい
う新しい税の導入が、議会での議論を経ることなく、行政府の判断のみで
行われたことになります。もう1つ背景として大きいのは、一般に中国で
は、レシートに増値税の税額の記載が無い点です。買い物をする際に税を
意識することが無いわけで、中国の消費者にとって増値税は、いわば「見
えない税」なのです。

 わが国では、新聞やテレビで税について頻繁に取り上げられますが、こ
れは税に対する関心の深さを反映していると言えるでしょう。「見えない
税」から見えてくるのは、税の決定への国民の参加、と言えるのかもしれ
ません。

                      主税局調査課 川本 敦

・付加価値税率(標準税率)の国際比較

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/102.htm

(追記)なお、ややっこしいのですが、中国では増値税とは別に「消費税」
と呼ばれる税があります。中国の「消費税」は、日本の消費税と異なり、
特定の物品(宝飾品など)のみが課税対象となります。
 
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6 編集後記

 子供向けホームページ『ゴー!ゴー!ふぁいなんす★タウン』の内容を
更新しました。ホームページに対するアンケートで多数ご要望がありまし
た、新たなクイズやゲームを設けるとともに、「ふぁいなんす★ルーム」
では先日成立しました平成18年度予算のデータなどをご紹介しています。
ご家族そろって楽しくご利用ください。次回発行は4月下旬の予定です。
(角田)

・ゴー!ゴー!ふぁいなんす★タウン

  http://www.mof.go.jp/kids/top.html

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

このメールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/merumaga/merumagaback.htm

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