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税制メールマガジン 第25号 財務省


税制メールマガジン 第25号                 2006/02/28 

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◆ 目次

1 巻頭言 〜基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の意義〜
2 税制をめぐる最近の動き
3 外国の税制との比較について
4 アメリカ出張で印象に残ったこと 〜海外調査番外編〜
5 諸外国における税制の動き 〜メルケル新首相の決断〜
6 編集後記

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1 巻頭言 〜基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の意義〜

 先月号の巻頭言で、日本の「国のかたち」は「低福祉−超低負担」とも
言うべき状態にあるので、将来世代に負担の先送りをしないよう、受益と
負担のバランスを図っていく必要があると述べました。その場合の一つの
重要な指標が基礎的財政収支(PB:プライマリー・バランス)です。今
日はその意義について、かいつまんでご紹介させていただきます。

(1)基礎的財政収支の意味
 基礎的財政収支(PB)は、

PB = 国債費(国債の元利払費)− 公債金収入(新規国債発行額) ・・・(A)

と表されます。過去からツケを負わされている額(国債費)と、将来にツ
ケを回す額(公債金収入)とが等しければ、ネット(差し引き)でみれば、
将来への負担の増幅はしていない均衡状態と言えますが、現状では、大幅
な負担の先送りをしてしまっています。

(2)基礎的財政収支の所要黒字額
 基礎的財政収支は、均衡させればよい(黒字化させればよい)と誤解さ
れている向きも多いのですが、債務残高のGDP比を発散させないための
条件は、PB≧0ではなく、

PB ≧(名目利子率−名目成長率)× 公債残高 ・・・(※)

です。先進各国とも1980年代以降、基本的に名目利子率が名目成長率
を上回っていることに鑑みれば、(※)式の右辺>0であり、PBは一定
の黒字が必要ということになります。

(3)金利が上昇した場合の基礎的財政収支
 「仮に金利が上昇しても、利払費の増幅分だけ公債発行を追加すること
になるから、(A)式より、基礎的財政収支は変わらない(悪化しない)
ので、基礎的財政収支は財政指標として不適切なのではないか」との指摘
がありますが、それはちょっと違います。金利が上昇すると、(※)式の
右辺は大きくなります。つまり、金利上昇は、PBの現在値を変えないも
のの、所要黒字額を高めるのです。

(4)財政再建を先送りすることの罪深さを物語る基礎的財政収支
 財政の健全化をずるずると先送りしていると、(※)式の右辺は、公債
残高の増幅や、下手をすると金利の上昇をも伴って、大きくなっていきま
す。つまり、手をこまねいていると、財政再建のために越えなければなら
ないハードル(PBの所要黒字額)をどんどん(余計に)高くしてしまう
ことになります。財政再建を今やるか後でやるかは、単に世代間のゼロ・
サム問題ではなく、現世代と将来世代を通じたトータルとしての不幸・苦
痛を増幅するマイナス・サム問題を巻き起こすのです。

(5)基礎的財政収支の目標
 基礎的財政収支は、(※)式から、金利が成長率を上回る限り、一定の
黒字(+α)を達成する必要がありますが、それだけではまだ十分とは言
えません。景気が悪いときには目標水準を下回ることもやむを得ませんが、
景気が良いときには目標水準を上回る黒字(+β)が必要です。さらに、
金利上昇リスクをできるだけ低くするとともに財政の機動性・柔軟性を確
保するためには、世界最悪となっている債務残高のGDP比を低減させて
いく必要があり、そのためには、更なる黒字(+γ)が必要となります。
こうした意味において、基礎的財政収支は、単に均衡(PB≧0)を目指
すのではなく、一定の黒字(PB≧+α+β+γ)を目指していく必要が
あります。

                              主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 税制をめぐる最近の動き

 下記のとおり、税制調査会が開催されました。

【2月17日(金)】
 第38回総会・第47回基礎問題小委員会合同会議
 ・海外調査報告、委員指摘事項に対する事務局説明

【2月28日(火)】
 第39回総会・第48回基礎問題小委員会合同会議
 ・財政の現状と財政悪化の要因について

・税制調査会の資料は、下記URLにてご覧いただけます。

  http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

・これまでの審議の概要等は、下記URLにてご覧いただけます。
 (順次、掲載を行っているため、直近の開催分が未掲載の場合がござい
 ます。)

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy012.htm

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3 外国の税制との比較について

 税制のあり方を議論する時に、外国と比較して高いとか、外国ではこう
なっているとか、諸外国でも同じであるといった議論をすることがありま
す。主税局には外国調査を担当する係があり、私も10年前に米国税制を
担当していました。若い時にした仕事にはどなたも思い入れがあると思い
ますが、私も税制を考えるときには、すぐに外国では・・・と考えてしま
います。
 
 外国の税制は(我が国でも同じですが)色々と悩んだ末にできたもので
あり、それを参考に議論することには大いに意味があるところですが、他
方で、税制のあり方は、それぞれの国の社会、経済、文化、歴史を背景と
しているため、その本質を見ることは難しいと感じさせられることがよく
あります。

 諸外国の税制は、英米型、欧州型、北欧型の3つに分けることができる
と思いますが、これは社会経済全体のあり方に由来するものです。最近、
ヨーロッパでは、ドイツ、フランスの経済が停滞する中で、欧州型システ
ムの持続可能性が議論されているようです。そのような議論の中で、昨年
10月の米系新聞(ヘラルド・トリビューン)に、これら3つの社会経済
モデルの違いを「欧州型:規制が厳しく、社会保障が充実、政府と労働側
が協調」、「英米型:市場重視、税負担が低く、福祉は限定的」「北欧型
:二つの型の併合型、社会福祉の充実とともに国際競争に積極的に参加」
と解説している記事がありました。

 この記事のような北欧型に対する評価は、日本での受け止め方とは若干
異なる印象を持ち、興味深く思いました。調べてみると、北欧諸国は税負
担が重いことで有名ですが、他方で、EU諸国の中では人口の少ない小国
でありながら、グローバル化の進む中で国として発展するため、国の経済
競争力を重視しています。例えば、スウェーデンでは、国民全体としての
税負担は諸外国よりも高い中で、法人課税や資本蓄積に影響を与える金融
所得課税は諸外国の水準を意識して設定されているようです。

 このように、我々がよく知っていると考えている基本的な認識について
も、他の国では相当違う見方をしていることはよくあることで、本当のと
ころを知ることは難しいということを感じた次第です。

 現在、政府は、徹底した歳出改革を行うとともに、歳出・歳入一体での
改革を進めることとしております。税制のあり方については、まさに国民
が決めることであり、国民的な議論が必要です。その際には、諸外国の税
制のあり方をも参考としつつ、ああだ、こうだと議論をすることにも意味
があると思います。議論の材料として正確な情報を提供することが主税局
の外国調査係の仕事だとここで書いたら、今の担当者に責任が重すぎると
言われるでしょうか。

                   主税局税制第二課 彦谷 直克

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4 アメリカ出張で印象に残ったこと 〜海外調査番外編〜

 政府税制調査会では、1月28日(日)〜2月5日(日)の1週間、委
員2名と事務局2名とで、米国への調査出張を行い、米国で昨年11月に
公表された抜本的税制改革の提案について、その背景や評価をいろいろと
調査しました。

 出張時の調査結果については、2月17日の政府税制調査会で報告があ
り、その内容はホームページをご覧いただきたいのですが、私も、事務局
の1人として出張に参加しましたので、ここでは、今回の出張を通じて個
人的に印象に残ったことを、お伝えしたいと思います。

 アメリカでは、イラク戦争やハリケーン復興費用の影響もあり、200
6年度の国(連邦)の財政赤字は4,230億ドル(約48兆円)で過去
最大と言われていますが、国・地方の借金総額(債務残高)は、GDP比
約65%と、日本の約160%と比べれば比較にならない低い水準です。
また、先進国に共通の悩みであるはずの少子高齢化についても、「高齢化」
はともかく、「少子化」の方は、合計特殊出生率2.04と、日本の1.2
9と比べれば相当の高水準といえます。

 にもかかわらず、今回の出張でお会いした方々からは、「米国でも今後
高齢化が進み、年金や高齢者向け医療のための支出が増えるので、今すぐ
にでも税負担を増やさなければならない」という意見が聞かれました。将
来の社会保障給付の増加に備えて、今から手を打っておかなければならな
いという発想です。

 一方で、「税負担を増やしてまで年金や医療給付の水準を守るべきでは
ない」という議論もあるようです。高齢化により年金や医療給付の対象者
が増えれば、1人当たりの給付水準を減らして、その分は自助努力で対応
すべきだという発想です。

 これら2つの主張は、方向は全く逆ですが、共通点があります。それは、
受益を充実させれば税負担も増え、税負担を増やさないのであれば受益は
我慢せざるを得ない、という、考えてみれば当たり前の前提に基づいてい
るということです。そこには、税負担は軽く、受益は手厚く、足りない部
分は将来に先送り、という発想はなく、税負担と国民が受ける利益を一体
として、将来に向けて、その水準のあるべき姿を議論していく、という姿
勢が共有されています。

 税負担のあり方は、私たちひとりひとりが、将来を見据えて考え、議論
していくべき問題だと思います。30兆円近い国債を発行している中、私
たちに残された時間はそう長くはないのかもしれません。

(参考)政府税制調査会ホームページ

 http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/top_zei3.htm

                     主税局調査課 坂本 成範

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5 諸外国における税制の動き 〜メルケル新首相の決断〜

 「我々がこの国を前進させることが出来ること、勇気と互いへの思いや
りを持っていることをともに証明しましょう。ドイツは、きっとより多く
のものを達成できるはずです。」

 これは、昨年11月に行われたメルケル首相の就任演説の締め括りの部
分です。ドイツでは、昨年9月に行われた総選挙の結果、有力政党である
CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟)とSPD
(社会民主党)による大連立政権が成立し、アンゲラ・メルケル氏が首相
に就任しました。

 両党の連立協約の中で、重要な施策の一つとして位置づけられているの
が、付加価値税の標準税率の16%から19%への引上げと、所得税の最
高税率の42%から45%への引上げ(独身者の場合、年収25万ユーロ
(約3,425万円)以上の高額所得者に適用)です。

 この二つの施策は、もともと選挙戦において両党が対抗して主張してい
たものでした。CDU/CSUが付加価値税の引上げ(標準税率の16%
から18%への引上げ)を公約に掲げたのに対し、SPDは高額所得者に
対する所得税の引上げを主張し、激しい論戦が行われたのです。しかし、
連立協議の結果、ともに2007年1月から実施する予定の施策として取
り入れられました。

 連立政権において、増税を意図した両党の異なる施策がともに取り入れ
られるのは珍しいと思われるかもしれませんが、背景にはドイツが抱える
深刻な財政赤字の問題があります。2005年のドイツの財政収支(対G
DP比)は▲3.9%となっており、日本の▲6.1%という赤字の水準
に比べれば低いものの、EUが規定する財政赤字の基準(▲3.0%)を
4年連続で超過しています。このため、メルケル政権は財政赤字の問題に
対して強い危機感を持っているのです。

 就任演説の中で、メルケル首相は、「付加価値税率を2007年から3
%引上げるという決定が、我々にとって最も難しい決断であったことは否
定しない。」と述べています。政権が今後どのような政策運営を行ってい
くのか、それについてドイツ国内でどのような議論が行われるのか、日本
としても注目していくべき問題であると思います。

                     主税局調査課 荒井 夏來
 
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6 編集後記

 現在政府は、「簡素で効率的な政府」の実現に向け構造改革を推進して
います。国の行政機関の「総人件費改革」はそうした取り組みの1つであ
り、国の行政機関の定員を今後5年間で5%以上純減するという目標を掲
げています。行政改革推進事務局のホームページに、この問題について国
民の皆様の意見を広く求めるために新しいサイトが立ち上がりましたので、
ご興味のある方はぜひご覧になってください。次回発行は3月下旬の予定
です。(角田)

 ・「国の行政機関の定員の純減に向けて」
   
  http://www.gyoukaku.go.jp/soujinkenhi/

 ・「行政減量・効率化有識者会議」

  http://www.gyoukaku.go.jp/genryoukourituka/

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

このメールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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