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税制メールマガジン 第23号


税制メールマガジン 第23号  財務省         2005/12/27 

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◆ 目次

1 巻頭言 〜平成18年度税制改正の歴史観的考察〜
2 特集 〜平成18年度税制改正案の概要〜
3 (主税局1年目の)若手はこう見る 〜税制改正について〜
4 諸外国における税制の動き 〜フランスの「新しい」一面〜
5 編集後記

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1 巻頭言 〜平成18年度税制改正の歴史観的考察〜

 かのローマ帝国は、外敵によってではなく、自らの財政破綻によって滅
亡したと言われます。「パンとサーカス」という言葉で象徴される当時の
豪奢なポピュリズム政治は、1.属領から没収した物資(や人的資源)を
財源としていたこと、2.富裕層を含めて配給等が行われていたことの2
点において、今日でいうバラマキ政治とは若干様相を異にしています。し
かし、1.財源の拡大(=帝国の拡張)が無限ではあり得ないのにバラマ
キの拡大を続けたこと、2.投票権を有する市民の人気を得て権力の座を
維持するために過剰サービスを展開したことの2点において、今日でいう
バラマキ政治と相通ずるものがあります。

 統計数字的に、「パンとサーカス」がどの程度当時の財政を圧迫するマ
グニチュードを持っていたかは、必ずしも定かではありませんが、80万
人からのローマ市民の4分の1に相当する20万人もが食料(小麦)の無
料配給を受けていたとか、コロッセオなどで年間135日とプロ野球のペ
ナントレースさながらの頻度で格闘技ショーが無料で開催されていたとい
うだけでも、かなりの放漫財政ぶりがうかがえます。

 古代の帝国政治は、近隣の属領に負担を押しつけ、中世の封建政治は、
国内の被支配階級に負担を押しつけ、いずれも持続可能性を超えた放漫財
政に陥って自らの政権基盤を失いました。現代民主主義国家は、将来世代
に負担を押しつけながら、持続可能性を超えた財政運営を展開しています。
私たちは、不当な負担の押しつけに基づく繁栄は「虚栄」でしかなく、持
続不可能であることを、歴史から学びとるべきではないでしょうか。

 人類史上、国債は、もともと戦費調達のために発行されたものですが、
米国の初代大統領ジョージ・ワシントンは、その退任演説のなかで、独立
戦争のために発行した国債について、「狭量にも後世の人々に先送りした
りせず」とその返済努力を国民に呼びかけています。もし戦争に負ければ
将来にわたって平和と自由が奪われるからこそ将来世代にも負担してもら
うことが(少なくとも国内的には)許された戦時国債についてさえ、先送
りを戒めているのです。

 先進国のみならずOECD加盟30カ国で最悪となっている日本の国債
残高は、バブル崩壊後にその7割が積み上がりました。それは「失われた
10年」で瀕死の日本経済を救うために数々の非常手段を採ったことと、
世界一の高齢化で社会保障経費がかさんだことによるものですが、戦時で
もないのに巨額の負担の先送りを続けることは、歴史的に恥ずべき汚点と
もなりかねません。

 このほど平成18年度の税制改正の大綱が策定されました。定率減税の
廃止や研究開発税制・IT投資促進税制の見直しなどで大幅な増税である
との報道もなされていますが、歴史観的見地に立てば、90年代の経済危
機を救うためのいわば生命維持装置は、雇用・設備・債務の3つの過剰の
構造調整が進んできた今、徐々に外していくべきであって、いつまでもそ
の莫大なコストを将来世代に先送りし続けるべきではないでしょう。一方、
今度の税制改正では、耐震改修や地震保険のための控除制度の創設、寄付
金控除の適用拡大等々、社会・経済の新しい動きに対応したさまざまな措
置も盛り込まれています。

 この先わが国は、さらなる少子高齢化が進む中で、増幅する社会保障等
のニーズを社会全体でどうやって担っていくかという深刻な問題への対応
を迫られます。消費税を含む税体系の抜本的改革への取組みが必要とされ
る所以です。18年度の税制改正は、これまでの経済危機対応型から、こ
れからの少子高齢化社会対応型の税制への転換の結節点ないしその第一歩
ともいうべき重要な意味を持っていると思います。

 歳出を含めた18年度予算全体としては、プライマリー・バランスの赤
字が▲15.9兆円から▲11.2兆円へと大幅に改善しました。それで
もGDP比で2%を超えるプライマリー・バランスの赤字というのは、依
然としてとてつもない大赤字であることに変わりはありません。不況時な
らまだしも、好況時に赤字を抱えているというのはやはり異常です。来た
るべき更なる少子高齢化社会へ向けて、財政全体の体質強化が必要です。

                              主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 特集 〜平成18年度税制改正案の概要〜

 11月下旬から、平成18年度税制改正の具体的中身について与党(自
由民主党、公明党)でのご審議をいただき、今月15日に与党から「平成
18年度税制改正大綱」が公表されました。

 与党大綱を踏まえ、財務省では19日、平成18年度税制改正案を公表
しました。この案については、今後、閣議決定を経て、来年の通常国会に
おいて法律案として審議が行われることになります。

 平成18年度税制改正案(主に国税関係)の主な内容は以下のとおりで
す。

 平成18年度税制改正案の概要

 現下の経済・財政状況等を踏まえ、持続的な経済社会の活性化を実現す
るための「あるべき税制」の構築に向け、所得税から個人住民税への本格
的な税源移譲を実施するとともに、定率減税を廃止し、併せて法人関連税
制、土地・住宅税制、国際課税、酒税・たばこ税等について所要の措置を
講ずることとし、次のとおり税制改正を行うものとする。

○個人所得課税
・いわゆる三位一体改革の一環として行う所得税から個人住民税への3兆
円の税源移譲に関し、所得税の税率構造を5%〜40%の6段階に改める。
(注)平成19年分以後の所得税について適用する。なお、平成18年度
においては、暫定的措置として、所得譲与税により税源移譲を行う。
・定率減税(所得税額の10%相当額、限度額12.5万円)は、平成1
8年分をもって廃止する。

○法人関連税制
・試験研究費の総額に係る特別税額控除制度について、比較試験研究費を
上回る部分の特別税額控除割合に5%を加える措置を講ずる。
・情報基盤強化税制として、産業競争力の向上に資する設備等で情報基盤
の強化を促すものの取得等をした場合に、基準取得価額の50%相当額の
特別償却と10%相当額の特別税額控除を選択適用できる制度を創設する。
・同族会社の留保金課税制度について、同族要件を大幅に緩和し、留保控
除額を拡充する等抜本的な見直しを行う。
・交際費等について、損金不算入となる範囲から1人当たり5,000円
以下の一定の飲食費を除外する。
・中小企業投資促進税制について、対象資産に一定のソフトウェア等を加
えるとともに、適用期限を2年延長する。

○土地・住宅税制
・土地の売買等に係る登録免許税について、税率を軽減する措置を講ずる。
・既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除制度を創設する(
費用の10%相当額、限度額20万円)。
・住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用期限を2年延長
する。

○国際課税
・国際的な投資交流の促進、租税回避の防止のための措置を講ずるとともに、
租税条約の規定に基づく情報収集制度を拡充する。

○酒税・たばこ税
・酒類の分類を「発泡性酒類」、「醸造酒類」、「蒸留酒類」、「混成酒
類」の4種類に大括りするとともに、税率の簡素化を図る(平成18年5
月1日から適用)。
・たばこ税の税率を1本当たり0.426円(国・地方合わせて0.852
円)引き上げる(平成18年7月1日から適用)。

○社会経済情勢の変化への対応
・地震保険料控除を創設する(最高5万円)。
・寄付金控除の適用下限額を5千円(現行1万円)に引き下げる。
・所得税等の申告書に係る公示制度を廃止する。
・給与の源泉徴収票等の電子交付を可能にする。
・新たな会社法の制定に伴い、所要の整備を行う。

○その他
・相続税の物納制度について、許可基準及び手続の明確化、審査期間の法
定等の措置を講ずる。

※ 税制改正案全文については、こちらからご覧いただけます。
・「平成18年度税制改正の大綱」
             (平成17年12月19日 財務省)(全文)

 http://www.mof.go.jp/genan18/zei001.pdf

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3 (主税局1年目の)若手はこう見る 〜税制改正について〜

 このたび、平成18年度税制改正の大綱がまとまりました。上の特集記
事にもあるように、三位一体改革の一環としての所得税(国税)から個人
住民税(地方税)への税源移譲や、定率減税の廃止など様々な改正を取り
扱っています。本年10月25日に政府税調が18年度改正に向けての議
論を開始してからというもの、税制について報道されなかった日はなかっ
たように記憶しています。そのような重要な仕事に携われて非常に嬉しく
思います。

 今回の税制改正に携わって感じたことは、税制というものは非常に幅広
く、奥行きがあり、かつ精緻であるということです。これは、税制が社会
全般を支えるインフラとして、特定の層に負担が集中することのないよう、
経済実態を踏まえて課税ベースの多様化を目指して改革を続けてきた成果
であり、今後も不断の見直しが必要である所以といえるでしょう。

 例えば、18年度改正で扱う項目は、個人の所得に関する所得税、法人
の所得に関する法人税、相続税や登録免許税などの資産税、租税条約など
の国際課税、第3のビール等何かと話題の酒税・たばこ税と多様です。ま
た、改正の内容も新しい会社法に対応して配当や株式の取引関係に関する
税制の見直しや、国際的な取引関係の複雑化に対応した税制改正を行うな
ど、常に社会・経済の動向にアンテナを張り巡らせ、その背景にある動き
を理解・洞察することが求められます。更に、今回の税源移譲にあたって
は、3兆円規模であるというマクロな制約条件と、個々の納税者における
税負担の変動を極力小さくするというミクロな制約条件があり、かつ所得
税はそもそも非常に精緻に出来ていることもあり、現場では数え切れない
ほどの試算を行い、精緻な検討を積み重ねました。

 このように主税局では、変化し続ける社会・経済の動向に目を向け、納
税者や関係省庁などからの様々な声や今後生まれてくる将来世代の声無き
声にも耳を傾けつつ、あるべき税体系なども勘案し、この18年度改正に向
けての準備を行ってまいりました。財務省ではこのメルマガに限らず、ホ
ームページで政府税調の審議中継や答申を掲載するなど積極的な情報提供
を行っています。これは、税のあり方、すなわち国のあり方を国民的な議
論や検証にさらし、説明責任を果たしていくための取組みと言っても過言
ではないでしょう。

 今後の税制に関して、新聞やテレビでは消費税を含む抜本的改革がよく
取り上げられます。具体的な内容は今後の議論如何ですが、国のあり方に
大いに関わることは間違いないでしょう。是非、みなさんも身近な税金か
ら興味を持たれて、国民的な議論に積極的に参加してみて下さい。

                     主税局総務課 津田 夏樹

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4 諸外国における税制の動き 〜フランスの「新しい」一面〜

 「新しいフランスを知っていますか?」

 これは、フランスの対仏投資庁が昨年から行っているキャンペーンで使
われているキャッチ・フレーズです。対仏投資を促進するためには、まず、
フランスが世界有数の工業国であることをもっと広く知ってもらう必要が
あるという問題意識から、このキャンペーンではフランスの「新しい」魅
力として毎年13,000件もの新規の特許登録があることなどが紹介さ
れています。確かに、フランスというと、高級ブランド品やワイン、フォ
アグラといったイメージが強く、「世界有数の工業国であり、企業誘致に
熱心な国」という「新しい」イメージを強く打ち出す必要があるのかもし
れません。

 さて、税についてみると、「フランスは間接税中心の国」というイメー
ジが強いように思います。消費税の税率は日本の約4倍の19.6%。酒
税やたばこ税だけでなく、民間航空税や出版税、砂糖税など、列挙するの
が困難なほど多く存在する間接税。確かに、間接税負担の高い国であるこ
とは間違いないでしょう。

 しかしながら、現在では、フランスの税収に占める直接税と間接税の割
合はおよそ1対1であり、直接税も重要な役割を占めるようになっていま
す。というのも、フランスでは1990年代より、所得税とは別に、所得
に対する様々な新しい税が創設されてきているからです。その中でも、1
991年に創設された一般社会税(CSG)は、所得水準に関係なく所得
の7.5%の税率で課税され、その税収は現在では所得税の税収の1.2
倍の規模にもなっています。他にも、社会保障基金の債務を返済するため、
所得の0.5%の税率で課される社会保障債務返済税(CRDS)が19
96年に新たに創設されるなど、今や直接税にも大きくウェートが置かれ
ているのです。

 日本に限らず諸外国でも、税制は常に新しく変化していくものですが、
イメージと異なる「新しい」一面を見つけることは、外国調査の楽しみの
一つと考えています。

                     主税局調査課 杉浦 達也

(参考)
・直間比率の国際比較

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/015.htm

・フランスの国民負担率及び租税負担率の推移(対国民所得比)

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/241e.htm

・フランス大使館対仏投資部

  http://www.investinfrance.org/Japan/
 
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5 編集後記

 本年は、税制メールマガジンをご愛読いただき、本当にありがとうござ
いました。来年が読者の皆様にとってより良い年になりますよう、編集部
一同お祈り申し上げますとともに、引き続き、読者の皆様に楽しくわかり
やすい情報を盛り込んだメルマガをお届けできるよう努めていく所存です。
次回発行は1月下旬の予定です。(角田)

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 〜「国の財政と未来を考える女性の集い」参加者募集のお知らせ〜

○ 財政制度等審議会財政制度分科会は、公聴会「国の財政と未来を考え
 る女性の集い」への参加者・意見発表者を募集します。

○ 本公聴会では、「毎日のくらしと財政の関係は?」、「国の家計簿の
 現状は?」、「わたしたちの子供や孫の世代にどんな影響があるの?」
 など、わが国の財政の現状や将来について、女性の専門家や財務大臣と
 ともに考えます。

○ 応募要領の詳細は財務省ホームページ(www.mof.go.jp 画面右側の専用
 バナー(黄色)をクリック))をご覧下さい。

              記

 日時:平成18年1月19日(木)午前10時半〜12時10分
 
 場所:六本木アカデミーヒルズ タワーホール
 
 港区六本木6−10−1 六本木ヒルズ森タワー49階
 
 参加対象:原則として、女性を対象。

 応募締切: 1.参加希望  :1月12日(木)必着
           2.意見発表希望:1月10日(火)必着

 出席者:幸田真音財審委員、竹中ナミ財審委員、谷垣禎一財務大臣

 照会先:財務省主計局調査課 03−3581−4111(代表)
                        内線5211、2327

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ご意見募集のコーナー

 政府税制調査会では、今後の審議の参考にさせていただくため、広く国
民の皆様から、御意見を募集しております。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

このメールマガジンについてのご意見、ご感想はこちらへお願いします。

mailto:mg_tax@mof.go.jp

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