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税制メールマガジン 第20号


税制メールマガジン 第20号       財務省          2005/9/30 

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◆ 目次

1 巻頭言 〜物価と金利と財政と〜
2 事業体課税について
3 若手はこう見る 〜温暖化防止と税制〜
4 諸外国における税制の動き 〜税制に表れるお国柄〜
5 編集後記

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1 巻頭言 〜物価と金利と財政と〜

 原油価格の上昇などからCPI(消費者物価指数)が年内にもプラスに
転じるのではないかとの見方が広がっています。物価の上昇は、財政にど
のような影響を及ぼすのでしょうか。

 デフレを脱却し、物価上昇が堅調で確からしいものとなれば(すなわち
期待物価上昇率がプラスになれば)、金利もそれに連れて上がってくる可
能性があります。もし金利が1%上がれば、500兆円を超える国債残高
の利払費は5兆円ほどかさみ、現状の1.6倍にもなります。公務員の人
件費を削るにせよ、公共事業を削るにせよ、5兆円の歳出削減はたやすい
ことではありません。金利上昇に伴う歳出増がいかにすさまじいかです。

 これに対し、「物価上昇で実質債務が目減りするし、税収が増えるから
いいじゃないか」と楽観視する向きもあります。しかし、そもそも税収等
の基礎的財政収入よりも基礎的財政支出の方が圧倒的に大きい(1.33
倍、差額15.9兆円)ため、物価上昇による歳入増よりも歳出増圧力の
方が大きく、更にこれに上述の国債費の肥大化が加わるため、財政収支は
悪化する危険性が大きいのです。

 したがって、財政運営上は「脱デフレ」を単純には歓迎できません。慶
応大学の池尾先生等が指摘されるとおり「デフレ頼みの財政運営」になっ
ている現実があるからです。だからといってデフレ脱却を回避しようとか
先送りしようなどというのではなく、デフレ脱却に耐えうる財政健全化が
必要だということです。

 なかには、「物価上昇局面においても低金利政策を採り続ければいいで
はないか」と言う人もいますが、物価が上昇している時に低金利政策を無
理して採り続ければ景気の過熱化と物価の高騰を招いてしまいます。今、
100万円の預金で100万円の軽自動車を買おうか考えている人がいる
とします。物価上昇率が3%の時に金利を1%に抑えていると、来年まで
待つと預金は101万円になりますが車は103万円になり、2万円損し
ますから、今買ってしまおうとするでしょう。無理な低金利政策は、こう
して消費をいびつな形で促進し、インフレを加速してしまうのです。

 「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」があるなどと言われます。後者は
国債市場の需給バランスが崩れて金利が上がるケースで、財政は悪化の一
途をたどります。今日ご紹介したのは、物価上昇に伴う「良い金利上昇」
と呼ばれるものであり、税収増や実質債務の目減りを伴うものですが、そ
れでも利払費の増幅インパクトが大きいため決して楽観は許されないとい
うことです。

                               主税局広報担当主税企画官 矢野 康治

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2 事業体課税について

 例えば、財務省主税局長という肩書きは比較的仕事の内容が分かりやす
いのではないかと思います。局長でなくとも、早く原稿を出すようにと私
のところまで催促に来ていた「財務省主税局総務課広報係長」といえば、
なんとなく仕事の内容がわかるような気になるのではないでしょうか。と
ころが、私の肩書きは、正確には「大臣官房企画官兼主税局税制第一課兼
税制第三課兼参事官付」です。何を担当しているやら肩書きからは、さっ
ぱりわかりません。

 このように、肩書きからはよくわからないのですが、私は、主として事
業体についての税制を担当しています。・・・事業体・・・・事業体・・
・・・事業体?・・・・・・正直に言えば、私自身、人事異動の際に「事
業体課税」を担当してもらうといわれた時には「事業体」が何のことだか
さっぱりわかりませんでした。担当が決まってから調べてみても、「事業
体」のきちんとした定義はないようです。むしろ、きちんと定義できない
ものをどう取り扱うのかと言うことが問題となっているのです。

 普通に考えると、事業というのは個人でやるのか、そうでなければ法人、
典型的には株式会社を作ってやるのが一般的でしょう。しかし、最近では、
法人以外の形態による事業活動も盛んになってきています。これまでも、
民法に定められる組合という事業形態を用いる事例はありました。この8
月1日には、新たな組合制度として、有限責任事業組合制度(LLP制度)
がスタートしました。このほかにも、様々な事業の形態がいろいろなとこ
ろで検討されています。このような、典型的な個人、典型的な法人の中間
領域にある事業の形態を課税上どう取り扱うのかと言うことが、「事業体
課税」といわれる問題です。

 このように、「事業体」とは非常にわかりにくい言葉ですが、課税との関
係には、いろいろな意味があります。

 まず、経済活動のバリエーションが増えることは経済の活性化の観点か
ら重要かもしれません。その新しいバリエーションについて、どのような
課税になるのかの見通しがある程度立たないと、事業が行いにくく、困る
ことでしょう。

 他方で、こういったスキームは一つ間違うと簡単に税逃れの道具になっ
てしまいます。外国においても、このようなスキームが税を逃れるために
使われるケースが数多くあると聞きます。正直な納税者が損をしないよう
に、不当に税を逃れる道を残さないようにしていく必要がありそうです。

 あまり目立つ話ではないかもしれませんが、重要なことと思い、仕事に
取り組んでいるところです。
 
                                         大臣官房企画官 小原 昇

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3 若手はこう見る 〜温暖化防止と税制〜

 今年の夏は官公庁を中心にクールビズ(Cool Biz)が推進され、ネクタ
イをしないサラリーマンの姿が街でも多く見受けられました。このクール
ビズのお陰で男性のビジネス用ワイシャツなども例年になく売れ行きが好
調のようで、電力消費量も例年に比べ減少するなど経済的効果もそれなり
にあったようです。個人的には、ネクタイをしない開放感に慣れたことも
あり、今後も引き続き日本全国でクールビズが推進されていくことを希望
したいものです。

 このクールビズは温暖化対策の一環として推進されているわけですが、
温暖化問題といえば、本年2月16日に京都議定書(気候変動に関する国
際連合枠組条約京都議定書)が正式に発効されました。この議定書におい
て、日本は2012年までに1990年比で6%の温室効果ガス(CO2など)
削減が義務付けられており(正確に言えば、2008年から2012年ま
での5年間の平均として6%削減することとされています)、この目標を
達成するために必要な対策・施策をまとめたものとして「京都議定書目標
達成計画」(本年4月28日閣議決定)が策定されています。

 この計画では、「環境と経済の両立」の観点から、様々な温暖化対策が
挙げられておりますが、環境税についても、経済的手法(市場メカニズム
を通じて、個人、企業等の経済合理性に沿った排出抑制行動を誘発させる
手法)の一つとして、「環境税については、国民に広く負担を求めること
になるため、(中略)地球温暖化対策全体の中での具体的な位置付け、そ
の効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、諸外国における取組
の現状などを踏まえて、国民、事業者などの理解と協力を得るように努め
ながら、真摯に総合的な検討を進めていくべき課題」と位置付けられてい
ます。

 これを受けて、今年も環境省を中心に環境税創設へ向け様々な検討が行
われておりますが、環境税自体の議論は、昨年の政府税調やその他関係す
る審議会等においても熱心に議論がなされ、その中で環境税の導入の是非
については、まだまだ検討を深めていかなくてはならない多くの課題があ
るとされています。

 環境税の果たす役割、効果などといった基本的な考え方一つとっても、
例えば、環境税を導入することによりガソリン、電力といったエネルギー
の価格を引き上げ、それらの消費を直接的に抑制すること(価格インセン
ティブ効果型環境税)に重点をおくのか、それとも様々な温暖化対策を実
施するための財源に重点をおいて環境税を導入するのか、(財源確保型環
境税)といったことについては、まだまだ議論を深めていく必要性がある
と考えられます。また、前者については、どの程度の税率であればエネル
ギー消費の抑制が見込まれるのか(最近の原油高の状況でもガソリン需要
は減少していないことをみても、相当の高税率でないと消費が抑制されな
いような気がしますが…)、後者であれば、約1兆3,000億円の既存
の温暖化対策予算の見直しや揮発油税や石油石炭税といった既存エネルギ
ー諸税との関係はどうするのかといった付随した問題も同時に議論してい
く必要があります。

 このような課題については、今年も中央環境審議会などの関係審議会を
始め各方面で熱心に議論が行われるものと考えられますが、我々としても
その議論の方向性を十分に踏まえ検討していきたいと考えています。

 地球温暖化問題は、最終的に地球全体の気候に与える影響や災害などの
大きさを考えると、単に京都議定書の目標を達成さえすれば全てが解決す
るといったものではなく、中長期的に現在のライフスタイル(大量生産・
大量消費・大量廃棄)を転換し、3R運動(Reduce:廃棄物の発生抑制,
Reuse:再使用, Recycle:再資源化)に代表される循環型社会の構築が求
められているのは確かでしょう。このような社会を実現、維持できるよう、
税制面でも(環境税に限らず)、「環境」という新しい視点からの検討が
今後非常に重要になっていくような気がします。

                    主税局税制第二課 原田 憲

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4 諸外国における税制の動き 〜税制に表れるお国柄〜

 前回はスロバキアで導入された究極のシンプルな税制をご紹介しました
が、今回は究極の「緻密」な税制とも言えるドイツの所得税の計算方式に
ついてご紹介しましょう。

 皆さんはドイツという国やドイツ人についてどういった印象をお持ちで
しょうか?「真面目、勤勉、信用できる」というイメージをお持ちの方が
多いのではないでしょうか。実は、税制にもドイツのそうしたお国柄が如
実に表れています。

 所得税においては、スロバキアのように単一税率を取る場合を除いて、
所得が増えるに従って適用される税率も高くなる累進税率を取るのが一般
的です。そして多くの国では、税率は階段状に上がります。例えば日本の
場合、所得が高くなるに従って適用される税率が10%、20%、30%、
37%と4段階で上がっていきます。ところがドイツの場合には、こうし
た階段が存在しません!最低税率(15%)と最高税率(42%)のみが
定められており、その間は、所得が増えるに従って計算式に基づいてなだ
らかに税率が上昇する「方程式」方式の累進税率を取っています。法律上、
y=(ax+b)x (y:税額、x:課税所得)といった方程式が明記されているの
です。

 「方程式」方式においては、常に一定の割合で税率が上昇していくので、
一般的な階段状の累進税率のように、ある所得の上下で適用される税率が
不連続に変化することは発生しません。税額と所得の関係をグラフにして
みると、美しい二次曲線を描きます。理論的には、段階的な税率に比べて
税制のもたらす歪みがより小さいといえるのかもしれません。

 もっとも、こうした方法で税額算定を行うに当たっては、常に所得金額
を方程式に当てはめて計算せざるを得ないため、計算のためのコストがか
かるというデメリットもあります。

 この「方程式」方式は、戦後間もなくからあるようです。コンピュータ
が発達した現代ならともかく、当時の技術でこのような税制を導入するこ
とは相当の労力を伴うものであったことでしょう。合理性と正確さを重ん
じる国民性を持っているからこそ、こうした制度が作られたのかもしれま
せん。税制は国家を写す鏡であると言われることがありますが、まさに格
好の一例と言えるのではないでしょうか。

                     主税局調査課 荒井 夏來

(参考)
 所得税の税率構造の国際比較(未定稿)

  http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/036.htm

 所得税、個人住民税の実効税率の国際比較(p.4)

  http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/siryou/kiso_b32a.pdf     

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5 編集後記

 税制メルマガが発刊20号目に到達しました。インターネットの目覚し
い普及により、ホームページやメールなどを活用した広報の重要性は一層
高まっています。今後、通信の速度や環境がますます向上することが見込
まれる中、どのような新しい形の広報ができるか、知恵を絞っていろいろ
と考えていきたいと思います。次回発行は10月下旬の予定です。(角田)

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ご意見募集のコーナー

 税制調査会では、「少子・高齢社会における税制のあり方」につき、ご
意見募集中です。

http://www.mof.go.jp/singikai/zeicho/iken/iken.htm

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