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タックスニュース
2016.12.09


【時事解説】コンピュータ将棋と埋没原価



 コンピュータ将棋が注目されています。

なぜ、コンピュータソフトは強いのか、と聞かれたあるプロ棋士は次のようなことを言っていました。

 「コンピュータもプロ棋士も最善手を探すことについてはほとんど差がない。

最も大きな違いは後悔の有無だ。

人間は一度悪手を指すと、その悪手について後悔の念から迷いが生じて、その後の指し手も間違えることが多い。

ところが、コンピュータは悪手を指しても、それがその後の指し手に影響することなく、常に平常心で最善手を探し続けられる。」

 私はこの話を聞いて、埋没原価(サンクコスト)について考え直しました。

埋没原価とは既に発生してしまっている原価で、将来の意思決定に影響させてはいけない原価のことをいいます。

たとえば、あるプロジェクト達成のために過去に1億円の設備投資を行ったとします。

この投資完成のためには、これからさらに9,000万円の資金投入が必要になります。

これをA案とします。しかし、これまでの投資とは全く別の新しい技術を採用すれば、8,000万円の投資で同様の効果を上げることができるB案があることがわかりました。

さて、A案とB案のどちらを採用すべきでしょうか。

 このときの過去に行った投資1億円が埋没原価です。

経営の意思決定には将来のキャッシュフローのみが問題であり、既に実行済みの投資を考慮に入れてはいけません。

この例でいえば、過去の投資の1億円は無視して純粋にこれからのキャッシュフローである9,000万円と8,000万円を比較して、8,000万円のB案を採用すべきだというのが教科書的結論になります。

 ただ、考えてみればこうした結論に至るのは、我々会計専門家やコンサルタントは会社のこれまでの意思決定にからんでいない外部者ゆえ、過去に指した悪手を無視して、冷徹な判断をするからです。

コンピュータ将棋と同じです。

 しかし、会社の経営は間違いもすれば、後悔もする人間が行います。

経営者は過去の失敗した投資に対して思い入れがあるはずです。

その投資には金額だけではなく、人間もかかわっています。

B案を採用すれば、おカネをドブに捨てるだけではなく、1億円の投資に携わった人間の努力も無駄になってしまいます。

単にキャッシュフロー計算上有利だからという理由だけで、これまでの投資を完全に反故にするB案に簡単にうなずくことができないのも無理からぬことです。

経営の根幹を揺るがすほどの差があれば別ですが、多少のマイナスであれば、彼らの努力に報いるために、過去の投資を活かすA案を採用するという選択肢もあっていいようにも思えてくるのです。

 不特定多数の株主がいる上場企業に対しては、将来キャッシュフローを最大化すべきだという意見に反論はしにくいのですが、利害関係者が限定されている非上場企業では、多少キャッシュフロー上不合理で経営効率が劣るとしても、過去の思いを大切にする経営判断があってもいいのではないか、という気もするのです。

あくまで効率性を追い求め冷徹な経営判断を勧めるコンピュータになるか、効率を多少犠牲にしても経営者の後悔の念を包摂できる人間になるか、コンピュータ将棋は我々にそんなことも考えさせます。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)


記事提供:ゆりかご倶楽部







国税庁HP新着情報
12月9日朝時点での新着情報は、以下の通りです。

国税庁ホームページ掲載日:平成28年12月8日

●「平成28年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」の一部改正について(法令解釈通達)(平成28年12月2日)



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