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タックスニュース
2015.08.24


【時事解説】トヨタ種類株式にみる資産運用の新しい形



 新しいトヨタ株(AA型種類株式)が話題になっています。

トヨタ自動車は元本保証、最高2.5%の配当利回りという、これまでにない新たなスタイルの株を発行しました。

通常の株には元本保証はなく、株価が下がればその分は損失となります。

それが、元本保証(トヨタに対して発行価格での買い取りを要求できる)というのだから魅力的ではあります。

 この新型の株式は種類株式といって、通常、会社が発行する株式(普通株式)とは異なります。

普通株式は議決権、利益の配当については、持っている株の数に応じて、それぞれ株主の権利が一律に決まります。

 種類株式では、議決権や配当、譲渡などで、普通株式と内容に違いを出すことができます。

今回の新型株は、種類株式の違いを用いることで、出資者にとっての魅力を生みだすこととなったわけです。

これは、企業にとっても種類株式を発行することで、資金調達というメリットを得ることができます。

 とはいえ、デメリットもあります。
今回のトヨタの新型株の場合、最大の難点は普通株式のように、自由に売買できないことにあります。

取得はトヨタが募集した時に応募する形をとっているため、欲しいと思っても、発行のタイミングまで待たなければなりません。

また、譲渡も最初の5年間はできない決まりになっています。

 リスクは普通株式と比べて低いもののゼロではありません。

万が一、トヨタが倒産したときは払い込んだお金は戻らないといったことが生じます。

また、トヨタに著しく悪質な不正が発覚し、上場廃止となった場合は、普通株式に転換できないといった不都合が生じます。

 トヨタの新型株式は普通株式と同じ条件の内容もあれば、異なった内容もあります。


 (1)配当について:2015年度は0.5%、1年ごとに0.5%ずつ上がり、2020年には2.5%になり、以降、2.5%を継続します。

現在のトヨタ自動車の予想配当利回り(*)の値は2.36%になります。

現況で比較すると、最初の4年間は普通株式のほうが利回りは良いのですが、5年以降は新型株のほうがよくなります。


 (2)譲渡制限:取得後、5年間は売れませんが、経過後は種類株式のまま保持することもできますし、普通株式へ転換、あるいは発行価格でトヨタに買い取ってもらうよう、要求することもできます。

 トヨタ自動車の株価が上がっていれば、普通株式に転換し、売れば売却益となります。

反対に株価が大きく下がっているときは、普通株式に転換すると損失となります。

その時は、そのまま持ち続けるか、取得価格で買い取り請求を出すかの選択肢があります。

銀行預金などと利回りを比べて、新型株の配当2.5%のほうが有利と判断したならば、そのまま持ち続けるのがよいでしょう。

トヨタに発行価格で買い取ってもらう場合、売却益は出ませんが、その間に配当金を受け取っているので、銀行預金と比べたら、受け取った金額は多くなることが予想されます。


 (3)議決権は普通株式と同様にあります。

トヨタの新型株第一回の募集は終了し話題となりました。

今後、他企業でも種類株式の発行の可能性は大いにあります。
新たな資産運用の形として、有益だといえます。

* 予想年間配当金を株価で割って算出した値、数値は2015年3集の会社四季報より


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)


記事提供:ゆりかご倶楽部







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