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タックスニュース
2015.01.09


【時事解説】ROEとROA



 利益指標として何を基準にするかは、時代によって、会社によって、あるいは対象として誰を想定するかによって、変わります。

 利益指標として最もポピュラーなのは、利益を売上高で割った売上高利益率です。

売上高利益率は非常に明快ですが、大きな欠点があります。

それは、業態が違えば売上高のベースが異なり、業種を超えた比較が困難になることです。

売上高利益率は同一業種の中で優良会社を探すときにはとても有効な指標ですが、幅広い業種の中で企業を比較するときには有用性を欠きます。

 その点、あらゆる業種にわたって共通に使える利益指標に、利益を自己資本で割るROE(Return On Equity自己資本利益率)があります。

ROEは株主財産である自己資本に対してどれ位稼げるかを見るのですから、どんな業種においても比較可能です。

したがって、株式市場においては非常に重要視される指標であり、ROEの高い会社は文句なく「いい会社」と評価されます。

「会社は株主のもの」と割り切れば、ROEは最重要な指標です。

 ただ、「いい会社」というとき、誰に対して「いい会社」かということを意識しているかが問題です。

ROEは会社全体を見ているわけではなく、株主しか眼中にありません。

会社全体の収益性は低くても、借り入れにより自社株買いをして(このことを「レバレッジを効かせて」と言います)、自己資本を圧縮すればROEを上昇させることができます。

つまり、ROEは財務戦略だけでどうにでもなるのです。

 ROEの算定においては、自己資本が小さいほど有利になります。

ROE向上のために、自己資本を小さくすれば、株主にとっては望ましくても、会社の安全性は低下しますから、債権者や従業員にとっては決して喜ばしいことではありません。

特に雇用の流動性が確保されていない日本においては、従業員は今働いている会社には安定・存続してほしいと願っています。

したがって、「会社がすべてのステークホールダー(利害関係者)のもの」とする立場からはROEだけで会社を評価することはできません。

 そこで登場するのが利益を総資産で割るROA(Return On Assets総資産利益率)です。

ROAは企業が所有する総資産がどれだけ利益に貢献しているかを測る指標です。

 ROAは財務戦略を弄することでは操作できません。

ROAを上げるためには、本業の収益性を高めなければなりませんし、収益性の低い資産の処分も必要になります。

ROAを引き上げるには会社の本当の力が必要とされますから、簡単にはできません。

 株式市場においてROEは依然として重要です。

しかし、ROE向上のために小手先の財務戦略によるのではなく、すべてのステークホールダーを意識してROAを引き上げ、その結果として株主のためのROEがアップするというのが王道です。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)



記事提供:ゆりかご倶楽部



1月9日朝時点での新着情報は、以下の通りです。

国税庁ホームページ掲載日:平成27年1月8日

●「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)(平成26年12月22日)


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