タックスニュース
2012.05.11


農業ビジネスに商機を見出そう



 TPP加盟に関しては、日本の農業を守るために加盟について慎重な意見がありますが、ここでは日本の農業を守るというスタンスではなく、新しい産業としてのビジネスの可能性について考えてみたいと思います。

 日本の農業は衰退傾向にあります。
耕作放棄地は増え続け、農業従事者の人口は減り続け、従業者は高齢化が進んでいます。
しかも農作物(穀物を含む)の輸入超過は5兆円規模に膨らんでいる状況です。

 しかし、逆にいえば、輸出国に対抗できる農業ビジネスが確立すれば、数兆円のビジネスが掘り起こされる可能性があると見ることもできるでしょう。

産業化してコストを下げた高品質の国産農作物なら、輸送費のかかっている輸入品と十分に戦えるはずです。

 しかも農業は、観光や教育、医療といった他産業と協力することで、新たなビジネスを創出できる絶好のポジションにいるのです。

たとえば、サービス分野を例にとれば、団塊の世代や若年ファミリー層に人気の市民農園や貸し農園が有力です。

定着率の低さが課題となっていますが、農業サポーターを配置するなど、サポート体制を充実させていけばアグリビジネスの産業化を後押しする有望市場へと成長していく可能性があります。

 また、インターネット販売や宅配などによる産直市場も伸びが顕著となっています。

インターネット上で、大きさが不ぞろいの規格外の農産物や包装ラベルのミスによって出荷できなかった農産物などを取り扱う、いわゆる“わけあり市場”がブームとなっています。

これは、供給者サイドの常識と消費者ニーズとの“ズレ”に商機を見いだした最たる例といえます。

 最近、新規事業として農業ビジネスに参入する企業が増えています。

農水省による行政スタンスの変更等を受け、他産業からの参入が以前に比べしやすくなっていることが後押ししているようです。
では、具体的にどのような農業ビジネスが展開されているのでしょうか。

 イトーヨーカ堂は、2008年8月に、千葉県富里市に地元JA、生産者と共同出資で「株式会社セブンファーム富里」を設立しました。

生産にあたっては、イトーヨーカ堂の店舗から排出される食品循環資源(食品残渣)を原料に含む堆肥を使用し、出荷される商品は全てイトーヨーカ堂で販売されています。

 住友商事は、2010年11月に鹿児島県の農業生産法人に出資しています。

この農業生産法人の戦略の1つに畜種農家の堆肥利用による循環型農業への取り組みがあります。

休耕地を借り上げ、畜産農家等から家畜の糞や尿をもらい、それをもとに野菜を栽培する仕組みを確立しています。(日本経済団体連合会「農林漁業等の活性化に向けた取り組みに関する事例集」2011年3月より)

 その他、トヨタ自動車、JR東海、双日、セコムなども農業に進出しています。

 新規ビジネスとして参入している企業においては、契約栽培などによって独自の直販ルートを持つ等の対応をしているところが多く見受けられます。

このような対応を行うことで、値崩れのリスクを抑えられるだけでなく、毎年の売上高が予測でき、計画的な設備投資や研究開発投資が可能になるためです。
新たな商機として農業に注目してみてはどうでしょうか。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)


記事提供 ゆりかご倶楽部







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