タックスニュース
2012.07.27


下請企業の売上拡大のための方策



 新興国市場の台頭や円高の進展に伴い、大手完成品メーカーは海外生産をこれまで以上に拡大させるとともに、部品調達先を日本国内に限らず海外企業も含めたグローバルな調達へとシフトさせており、下請企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。

 こうした中、下請企業にとっての販売先となる大手完成品メーカーなどの取引先企業は、下請企業の選別を強化しています。

これまでは、取引関係の長さなどが重視され、既存の下請企業と継続的に取引がなされてきました。
しかし最近では、取引先企業側においてQCD(品質、コスト、納期)を中心とした格付システムが導入され、それらの評価に基づいて発注先の見直しが図られています。

 また取引先企業は、QCDの要求を厳格化させるだけでなく、プラスアルファの3つの競争優位性を下請企業に求める傾向にあります。

 1つ目は技術力であり、取引先企業が完成品を製造するために不可欠な製造・加工技術を有する力を指します。

2つ目は柔軟性であり、取引先企業の多様な発注に柔軟に対応することで、完成品をより速く製造することに寄与する力を指します。

3つ目は提案力であり、取引先企業の新製品開発や製品高度化に寄与するような提案サービスを提供する力を指します。

 このように、下請企業が売上を拡大するためには、技術力、柔軟性、提案力といった3つの競争優位性をもつことが求められるのです。


 では、下請企業の売上拡大のためにはどのような方策が求められるのでしょうか?

 一つの方向性として、自社製品の開発や販売を進めていくことで下請的な性格を弱めていく「脱下請」が考えられます。

しかしながら、これまで特定の取引先企業からの受注に依存してきた下請企業が、独力で一から営業を行ったり販路を開拓したりすることは容易ではありません。

このため「脱下請」を急激に進めることは、多くの下請企業にとって必ずしも現実的な方向性とはいえないのです。

 もう一つの方向性として、下請企業としての競争力を高めつつ、取引相手を増やしたり、受注領域を拡大したりすることがあげられます。

こうした方向性は、下請的な性格を弱める「脱下請」に対して、下請的な競争力をむしろ高めるという意味で「強い下請」を目指すこととなります。

 「強い下請」を目指すための戦略は、技術力、柔軟性、提案力といった下請企業に求められる3つの競争優位性を軸に以下の7つにまとめられます。


 まず、技術力に関連した戦略としては、

@独自技術の開発

A生産技術の高度化

B一貫生産体制の確立

があげられます。


柔軟性に関連した戦略としては、

C少量生産体制の確立

D短納期生産体制の確立

があげられます。


提案力に関連した戦略としては、

E新製品開発や既存製品高度化に関する提案機能強化

F製造プロセスに関する提案機能強化

があげられます。


 そして、「強い下請」を目指すための戦略を遂行するには、その基盤として製造設備や人材という自社の経営資源の継続的な蓄積が求められるのです。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)


記事提供 ゆりかご倶楽部







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