タックスニュース
2012.12.25


【時事解説】財政の崖という新たな経済問題



 アメリカでは、オバマ大統領の再選が決まったものの、今、大きな財政問題にぶつかっています。

それを表すかのように、再選の直後、株式市場では株価の急落が起こりました。
その要因となったのが「財政の崖」です。

 問題は、ブッシュ大統領が実施した減税策をはじめ、これまで様々な臨時の不況対策が導入されましたが、その終了時期が、たまたま今年の年末に重なることにあります。

このまますべてのプログラムが終了になれば、来年は減税の失効による実質増税に加えて、歳出の強制削減が実施されることになり、これが“崖から落ちるように”景気が悪くなる懸念であることから「財政の崖」と名づけられました。

 この「崖」がもたらす、アメリカ国民への負担はどのくらいかというと、減税の失効に関しては2013年度だけで約4,000億ドルの実質増税だといわれています。

たとえば、オバマ政権がリーマン・ショック後に導入した減税ひとつとっても、税率が4.2%から6.2%に戻され、1人当たりで年700ドル以上の負担増になります。

もう一つの歳出削減の緊縮を合わせると総額で約5,600億ドル(約45兆円)もの規模になるといわれています。

 このまま対策が進まず、財政の崖が起きれば2013年前半、アメリカ経済は3%弱のマイナス成長に転落すると予想されます。

そうなれば最近、明るい兆しをみせていたアメリカの雇用統計は再び悪化する恐れがあります。

 日本経済への影響としては対米輸出減少や円高進行などに及ぶ可能性があり、これが株価下落のほか、企業の設備投資の抑制、雇用の悪化などにつながることが懸念されています。

 なんとしても、アメリカは財政の崖を回避しなければなりません。
そのために、いくつかの対応策が存在します。
ひとつは、税法の改正が挙げられます。

ただし、今のところ、どう改正するかで共和党と民主党の意見が分かれています。
共和党はブッシュ減税の全面延長を主張しているのに対して、民主党のほうは、年収25万ドルを超す富裕層への減税打ち切り(実質増税)を唱えています。

 アメリカの議会は日本と同様に、下院と上院で「ねじれ」を抱えており、両党の意見を一つにまとめるのは難しいことが予想されます。
そこで、現在は減税を3〜6カ月間延長し、その間に妥協策を探るとの見方が浮上しています。

 そのなか、オバマ大統領は「財政の崖」問題回避に向けて、共和党の下院議長らと超党派の合意案作成に向け、本格的な協議を始めました。

今後は、オバマ大統領が提唱する高所得者層への増税に、共和党がどこまで妥協できるかが争点となります。

ただし、これも共和党の出方は不透明で、財政の崖回避に向けた道筋は、この原稿の執筆時点(11月22日)では明確になっていません。

 民主、共和両党が税法や予算管理法の改正で12月中に合意できるのか、問題が片づくまでの間、財政の崖の回避に悲観論が強まれば、景気にマイナスとなり、さらに株安を招きます。

当面、金融緩和路線を続けて応急処置をとることになりそうですが、この方針では、結局は長期金利の低下とドル安につながり、景気の後退につながります。

日本をはじめ世界の経済に影響する財政の崖問題、どのような解決方法に落ち着くのか目が離せません。


記事提供 ゆりかご倶楽部





平成24年の記事一覧へ




川島会計事務所
人間中心のTAXを見つめています