タックスニュース
220602


平成22年6月の税務トピックス


T 平成22年5月までに発布された法令等

 ○ 退職金の分掌変更通達に係る問題点(法人税)

(長崎地裁平成21年3月10日判決、国側控訴せず、一審で確定)

〈事件の概要〉

 本件は、株式会社X(原告)の代表者甲の妻丙が取締役(存任期間約23年)から監査役に分掌変更したことに伴う退職金1,800万円の支給について、いわゆる分掌変更通達(法基通9-2-32)により丙は同族株主に該当し、使用人兼務役員とされない役員に該当することで分掌変更に伴う退職金1,800万円の金額を否認し、平成16年6月期の所得の金額に加算しました。

原告は、丙の分掌変更は幹部社員2名が取締役に就任したことから丙が取締役に留任する必要がなくなったこと又母が健康上の理由から監査役を辞任して不在になっていたこと、さらに取締役に適さない子供のためにインド料理店を設け手伝ってやること等のためでした。

 すなわち、丙は取締役としての通常業務は無理だということで事実上転職し、週一回程度の会計監査の業務であれば務まるということで監査役に就任した分掌変更です。

そうした実態を踏まえずに一義的に分掌変更通達を適用して否認することは不合理であるとして不服申立てを行い、不服申立てが受入れられなかったことから訴訟(平成19年〔行ウ〕第12号)を提起したものです。

〈判示事項〉

 被告(国・長崎税務署長)は、取締役が監査役になっただけでは、役員の退職に該当しないとの理解を前提に当該退職金は退職給与に該当しない旨主張するが、退職給与は、役務の対価として企業会計上は損金に算入されるべきものであるところ、取締役が監査役に就任し、その任務が激変した場合であれば、その就任期間の役務に対して相当な退職金を支給した場合として、役務の対価の性格を有することから、損金算入することに弊害があるとはいえないとしました。

 以上によれば、取締役が監査役になった場合、その任務が激変しているときは退職給与と認めるべきであり、これに反する被告の主張は採用できないとしました。


 本件判決は、退職給与を役員の在職期間中の職務執行に対する対価であり、報酬の後払いとしての性格を有するから、分掌変更があった場合において実質的に退職と同様の事情があるときには、その支給した金額を退職給与として取り扱うことが相当であるとしました。

 しかし、国は分掌変更通達により、丙は同族会社Xの第1順位株主グループに属し12%の持株であり使用人兼務役員となれない役員の分掌変更に伴う退職金の支給であるので本件退職金の支給を退職給与として取り扱うことはできないと主張しました。

しかし、丙には〈事件の概要〉に述べたように職務の内容は激変し、実質的に取締役を退職したと同様の事情にある場合、例え丙の取締役報酬額月20万円を監査役報酬額月20万円として切下げがないとしても、これらの金額は低額であり更に低額にすることは困難であるから報酬額の変化がないことをもって、直ちに丙の地位又は職務の内容が激変していないということはできない。

又当該通達は例示であるからとして原告の主張を認めました。
この訴訟には、税理士が税理士補佐人として陳述しており、税理士の自力解釈権に基づく勝訴判決といえます。


法学博士・税理士右山昌一郎


記事提供 ゆりかご倶楽部








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