タックスニュース
211023


企業再生支援機構で中小・中堅企業を再建



 世界同時不況といわれる先行き不透明な経済状況にあって、企業は積極的な事業展開は控え、どうしても経営規模縮小、コスト削減型の経営戦略をとらざるを得なくなっている。

 このことがいわゆる合成の誤謬となり、大手企業の下請けを筆頭に厳しい経営状況に陥らせている。

 このような経営環境にあって政府は9月に、技術力や有力顧客を持ちながら販売不振、過剰債務などの経営課題を抱えている地方の中小・中堅企業の再建を支援する企業再生支援機構を立ち上げる。

 企業再生支援機構は半官半民でスタートし、機構の資本金の半分にあたる100億円は全国約100の金融機関から出資を求める方針のようである。

機構は取引金融機関から支援対象企業の債務を買い取って、出資と融資をするとともに経営人材を派遣し、経営再建を進める。

再建資金は機構が政府保証によって金融機関から借り入れる。
機構の計画では、支援対象企業の不採算事業の整理などを行い3年以内に再生の目途をつけ、新たなスポンサーに保有株を売却して支援を完了する。

 ところで、企業再生で問題となることの1つに課税問題がある。
支援企業が債務免除を受けると免除益が発生し、法人税を支払わなければならず、資金繰りが厳しい再建中の企業にとってはこの負担が大きい。

政府はこの免除益について、資産の評価損などと相殺できるようにして税負担をなくす手当をする。
また、債権放棄をした金融機関は債権放棄した際に発生した損失を課税所得から差し引くことができるようにする。

 ところで、この機構が本来の目的を実現できるか否かは、以下に述べることが重要と考える。

 第一に3年以内に再生できる実現性の高い再生計画を描くことができるかである。
人口減少社会、グローバル経済の中で、販売減少、海外展開の出遅れ、原材料高などで不振に陥った企業の再生計画をつくるのは容易ではない。

機構のスタートに向けて過去に再生業務を経験した数十名の人材が大手監査法人、金融機関出身者などから集められるようである。

 第二に、再生計画の実行体制ができるかである。
なかんずく、再生会社のトップリーダーに適任者が得られるかどうかである。
知力、体力、胆力を備えた人材がいなければ、再建の舵取りは難しいのではないだろうか。

 そして、第三に支援対象企業の現場の人材である。
よく現場力の強さが日本企業の特徴であるといわれる。

トヨタの強さは創意工夫して物づくりに励む、統率のとれた組織とまじめな人材のいる現場である。
どんなに立派な再生計画を作り、優れたリーダーを得たとしても、強い現場力がなければ再生は困難である。

 企業再生支援機構が本来の目的を達成し、雇用が確保され、地域経済が活性化されることは誰にとっても望ましいことであり、機構に大いに期待したい。

また、今後、支援対象が民間企業だけではなく、かねてより税金の無駄遣いが問題視されている第三セクターなどに広げられることも期待したい。


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