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相続税が変わる? 遺産取得課税方式とは



 平成20年度の与党税制改正大綱において、「新しい事業承継税制の制度化にあわせて、相続税の課税方式をいわゆる遺産取得課税方式に改めることを検討する」ことが明記されています。

 ここでいう「新しい事業承継税制」とは、同じく平成20年度の与党税制改正大綱に記載されている「自社株の相続税の納税猶予制度」のことです。

この制度は、取引相場の無い自社株式(未公開株式)を事業後継者が相続した場合、一定の要件を満たせば、当該自社株式に係る相続税額の80%が猶予されるというものです。

 同制度は平成21年度税制改正での成立が予定されており、成立すれば平成20年10月に遡って適用されるようです。

 そして、同制度に合わせて検討されることになっているのが、「遺産取得課税方式」という相続税の課税方式です。

 現在の課税方式は「法定相続分課税方式」と呼ばれるものです。

簡単に言うと、遺産が法定通りに相続されたものとして相続税額を計算し、その税額を実際に相続した遺産額の比率で各相続人に配分するものです。

 たとえば、遺産5億円を事業後継者である長男が4億円、次男が1億円相続した場合(他に相続人がいない場合)を仮定すると、以下のような概算になります。

■長男、次男の課税標準額
(遺産5億円−基礎控除額7千万円)×法定相続分1/2=2億1500万円

■相続税額の計算
課税標準額2億1500万円×税率40%−控除額1700万円=算出税額6900万円
算出税額(長男)6900万円+算出税額(次男)6900万円=相続税総額1億3800万円

■相続税額の配分
相続税総額1億3800万円×長男の相続分4億円/遺産5億円=長男の相続税額1億1040万円
相続税額1億3800万円×次男の相続分1億円/遺産5億円=次男の相続税額2760万円

※実際の相続税の計算ではさらにいくつかの控除等があります。

 一方、検討されている「遺産取得課税方式」とは、各相続人が実際に取得した遺産額(課税標準額)に税率を乗じて相続税額を計算する方式です。

まだ、基礎控除額や税率などが明らかになっていませんので確かな計算はできませんが、上の例だとおおよそ以下のようになるのではないかと思われます。

■相続税額の計算 ※基礎控除と税率が現在と同様と仮定した場合
(長男の相続分4億円−基礎控除7千万円÷2)×税率50%−控除額4700万円
=長男の相続税額1億3550万円
(次男の相続分1億円−基礎控除7千万円÷2)×税率30%−控除額700万円
=次男の相続税額1250万円

 この計算例だと、長男と次男の合計相続税額は1億4800万円になり、現在の課税方式よりも税額が1千万円増えることになります。

 遺産取得課税方式が採用された場合、相続税額の計算は簡素化されそうですが、遺産の配分については、これまで以上の注意が必要になるかもしれません。

 なお、この例で前述の「自社株の相続税の納税猶予制度」を利用した場合、たとえば長男の相続分4億円のうち2億円が自社株だった場合は、その自社株に係る相続税の80%が猶予されます。

税率50%だとすれば、おおよそ8000万円が長男の相続税から猶予されることになると思われます。







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