タックスニュース
201110b


連結納税の導入企業増加数は過去最低



 国税庁が「平成19事務年度における連結納税に係る課税事績について」を公表しました。

それによると、平成20年6月末時点の連結法人数は7341法人で、前年度に比べて154法人(前年度比2.1%)増えていますが、これは同制度が開始されてから最低の増加数となります。

 連結納税は平成15年3月期より導入された比較的新しい制度です。

簡単に言うと、親会社と親会社の100%子会社の損益を通算して法人税を計算できる制度で、たとえば親会社が1億円の黒字でも子会社が5千万円の赤字だった場合に、親会社の黒字を1億円−5千万円=5千万円に圧縮して法人税を計算することができます。

 同制度はもともと大企業の導入を強く意識した制度で、また制度開始直後は付加税(法人税率が+2%)という選択障壁もあり、導入メリットの大きい大企業だけが選択していました。

ただ、子会社を保有する中小企業は決して少なくなく、平成17年3月期以降は付加税が廃止されたことから、今後は中小企業の導入が進むのではないかという声もありました。

 ところが、平成17年6月末こそ付加税の廃止効果によって導入企業が1194社と大きく増えたものの、その後は平成18年6月末(+628件)、平成19年6月末(+511件)、平成20年6月末(+154件)と年々増加数は低下しています。

さらに、導入企業の顔ぶれを見ても大半が大企業で、中小企業の導入数は圧倒的に少ないのが現状です。

 このように中小企業の導入が進まない理由のひとつに、導入効果の測定が難しいという側面があります。

導入時点では親子会社の損益を通算することによって節税になることが明らかでも、それが永続的に続くとは限りません。

さらに、同制度には子会社の繰越欠損が持ち込めない、連結法人の資産等が時価評価され含み益が計上される場合がある、中小企業の税制優遇措置等が受けれなくなる場合があるなどのデメリットもあり、将来に渡っての損得勘定は非常に難しいと言われています。

それにも関わらず、同制度を導入した場合は「やむを得ない理由」が無い限りやめることができないのです。

 また、同制度を導入することで事務作業(特に親会社)は確実に増大しますし、法人税以外(消費税、地方税など)は各法人の単独申告が必要になります。

これらの問題を考えると、明らかなメリットが無い限り導入に二の足を踏むことになるのは仕方が無いことなのかもしれません。


参考URL
平成19事務年度 連結納税に係る課税事績







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川島会計事務所
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