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タックスニュース

190419


改正された減価償却の償却方法についての考え方



 平成19年度税制改正で減価償却制度が大きく変わりました。

改正法令等を見ると当初考えていたよりも大きな改正のようで、専門家や実務家の間でも法令解釈や対策等について話題に上ることが増えてきました。

 特に今回改正では残存価額、償却限度額という概念が無くなりました。

これは、平成19年4月1日以降に取得した償却資産について、毎年損金にできる償却費の額が上がることを意味します。

 減価償却の方法として定額法を採用している場合、おおよそ毎年償却できる費用が約1割上がります。

1割ですから、かなり大きな額の資産を購入しなければ大した影響は出ないでしょう。

■定額法の計算例
期首に耐用年数6年の償却資産を100万円で取得した場合
<改正前>
取得額100万円×0.9×償却率16.6%=毎年の償却額14万9400円
※0.9=(1−残存割合0.1)
<改正後>
取得額100万円×償却率16.7%=毎年の償却額16万7000円

 しかし、定率法を採用している場合は影響額が大きくなります。定率法は減価償却資産の帳簿価額に一定率(償却率)をかけて償却額を算出する方式で、設備取得直後の償却額が大きくなるのが特徴です。

■定率法の計算例
期首に耐用年数6年の償却資産を100万円で取得した場合
<改正前>
取得額100万円×償却率31.9%=1年目の償却額31万9000円
<改正後>
取得額100万円×償却率41.7%=1年目の償却額41万7000円

 償却額には、増えるのが良いケースと増えると困るケースがあります。


 増えるのが良いケースとは、利益が十分に出ていて償却額が増えれば節税になるケースなどです。経営的にも設備への投資額を早期に回収できるという点で好ましいのではないでしょうか。

 逆に償却額が増えると困るケースとは利益が不足している時などです。

特に事業の不調などにより予定していた利益額を達成することが難しくなった場合などは、増えた償却可能額がさらに利益を圧迫することになりかねません。
 
 現在の償却資産の状況や今後の設備投資計画、利益計画などを再点検して、減価償却に対する経営戦略を検討する必要があるかもしれません。

 一般的な企業で利用される償却方法は「定額法」と「定率法」です。

定率法は資産の帳簿価額の減少に応じて毎年の償却額が低下していく方法、定額法は毎年均等に償却していく方法です。

定率法の場合は取得直後の償却額が大きいため資金回収効率や節税効果が高く、定額法の場合は毎年の償却額の変動が少ないため利益計画等への影響が少ないというメリットがあると言われています。

 どちらの償却方法を利用するかは企業が選択できますが、選択しない場合は法人は定率法、個人は定額法が法定の償却方法となります。

また、建物(定額法)、生物(定額法)、営業権(均等償却)のように償却方法が定められている資産もあります。

この償却方法を変更する場合は、「新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日」までに所轄税務署長に申請することが必要になります。

 しかし、今回改正ではその影響の大きさを考慮してか、平成19年4月1日以後最初に終了する事業年度(個人の場合は平成19年)に限り、確定申告期限までに所轄税務署長に変更の届出をすれば、その事業年度(個人の場合は年分)の償却方法を変更することができる経過措置が手当てされています。(法令附則11-3、所令附則12-3)

 たとえば4月末決算法人の場合は6月末(延長申請がある場合は7月末)、個人の場合は平成20年3月15日の確定申告期限までに変更の届出をすれば良いわけです。

 なお、変更の届出をしなかった場合は、既に取得している償却資産と同一区分の償却資産は従来の方法(改正前の定率法→改正後の定率法など)が選択されたとみなされ(法令51-3、所令123-3)、新たな区分に該当する償却資産については法定の償却方法が選択されたとみなされます(法令51-4、所令123-4)。


参考URL
減価償却関係条文一覧
法人の減価償却制度の改正のあらまし(PDF








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